2012年08月26日
コンテンツ番号1846
民俗芸能の保存・伝承につなげる
(2012.8.26)
第7回北秋田市民俗芸能大会が8月26日(日)、市文化会館で開催され、市内外から詰め掛けた大勢の観衆が郷土色豊かな芸能の数々を楽しみました。
市内各地区の集落には、たくさんの個性豊かな郷土芸能が伝承されています。しかし、一般的には地区の祭典やお盆の時期、集落内で公開されていることから、ほかの地区の市民が目にする機会が少ないのが現状です。また、後継者不足などの理由から廃れてしまった芸能も多く、保存・伝承が課題にもなっています。
大会は、市内で演じられている芸能を一堂に集めて市民に公開し、民俗芸能への理解と関心を深め、保存・伝承につなげることなどを目的として始まったもので、第7回目となった今年の大会には、『比立内獅子踊り保存会』、『熊野神社餅搗き踊り保存会』、『李岱駒踊り会』の3団体が出演したほか、ゲストの国際教養大学地域環境研究センターが撮影した市内3団体の民俗芸能の映像が上映されました。
開演に先立ち、三澤仁教育長は「合併して北秋田市となって始まった、この民俗芸能大会も今年で7回目。このように一堂に会することにより、合併前より市内の民俗芸能を観る機会も多くなった。しかし、民俗芸能の活動団体は、当初51あったものが27と半減している状態。親から子、子から孫と継承されて来たものが、受け継ぐ子どもが減少し、継承が難しくなってきている。今年の成人式でも、地元の郷土芸能を新成人に観ていただいて、郷土愛をさらに深めた。民俗芸能は地元の宝、こういった機会を通して、子々孫々に伝えていきたい」などとあいさつを述べました。
オープニングを飾ったのは、比立内青年会(松橋盛昭会長)による「比立内獅子踊り」。比立内獅子踊りは、明治16年頃、小又生まれの松橋東助から浦田の「駒踊り」を伝習したのが始まりと言われており、踊りは行列・奴・駒・獅子踊りなどで構成されています。今回は「駒踊り」だけの上演でしたが、合戦で戦う騎馬の様子を表現したといわれる勇壮な踊りを8人の駒が舞台狭しと熱演し、観衆を魅了しました。
2番目に登場したのは、熊野神社餅搗き踊り保存会による「熊野神社餅搗き踊り」。米内沢新町におよそ400年ほど前から伝えられており、当時は未婚の男性たちの娯楽として自然に歌いだされたものです。赤い衣裳に黄色のたすきを掛け、豆絞りのほっかぶりに草履履きで女装して踊られました。昭和30年代になると、自然に老若男女を問わず踊りの輪に入るようになり、夜が明けるまで踊り続けたこともある。現在は、熊野神社の例祭前夜祭にあたる8月29日に社前で奉納されています。無病息災、五穀豊穣、安産などの祈願をこめた踊りとして、富凶の如何を問わず欠かさず踊りが継がれています。今回は「餅搗き踊り」のほか「メラシ踊り」や「猫竜(ねこじゃ)」「通り音頭」「ケンバヤシ」が上演されました。また、踊りの後には踊り手たちがステージから降り、観客にお餅を手渡しました。
次にゲストの国際教養大学地域環境研究センターの日比野 浩平 氏が、スライドを使いながら、北秋田市をはじめ県内の伝統芸能について講演しました。講演で日比野氏は「秋田県は国内最多の16もの重要無形民俗文化財が存在します。しかし、演者の高齢化による後継者不足や、最近は娯楽が多様化していることから、若い人たちの民俗芸能離れなどの課題を抱えています。また、映像媒体での保存が現在、非常に少ない。大学では映像を保存するとともに、映像を使いながら継承者づくりのきっかけになればと思っている」などと述べたあと、当センターが製作しているウェブサイト『秋田民俗芸能アーカイブス』について説明しました。このサイトでは、県内の民俗芸能をジャンルや開催日などでも検索できるようになっているほか、県内の民俗芸能を映像で観ることができ、現在は300件を超える映像が用意されています。講演の後には、当センターが撮影した市内の民俗芸能のうち『太田番楽』、『上杉大名行列』、『幸屋渡番学』の3件をそれぞれ15分程度に編集した映像が上映されました。
最後に、李岱駒踊り保存会による「李岱駒踊り」。起源は定かではありませんが、口伝によれば300年以上さかのぼり、佐竹氏が秋田転封のさい踊ったという道地ササラを習得して始められたといわれています。当初は男性のみの「若勢団」による奉納踊りとして続けられてきましたが、戦後に一時休み、青年会に受け継がれ、女子の参加も得て「李岱駒踊り会」と「親子会」が中心に活動をし、毎年8月13日には集落内6カ所以上で公演をしています。踊りは「ぶっ込み」「奴踊り」「駒踊り」の順で踊られる構成となっていますが、今回は「駒踊り」だけが上演されました。
市内外から訪れた満場の観衆は、上演されたそれぞれの勇壮で優雅な郷土色豊かな各地区の芸能をたっぷりと堪能していました。
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