2006年08月06日
コンテンツ番号4631
村上敏明テノールリサイタル
朗々たる美声で聴衆を魅了したオペラ歌手・村上敏明氏(5日、市文化会館)
世界の舞台で活躍し、オペラ界で注目されているテノール歌手・村上敏明(33)氏のリサイタルが8月5(土)、市文化会館で開催され、市内外から訪れた約400人の聴衆が圧倒的な美声に魅了されました。
村上氏は国立音楽大学声楽学科卒業。大学在学中よりオペラデビュー、イタリアオペラを中心に幅広いレパートリーを有し、新国立劇場・藤原歌劇団や、イタリアの劇場・フェスティヴァル等、国際的に活躍しています。平成16年度五島記念文化賞オペラ新人賞(第1回受賞者は錦織健)を受賞。現在、研修のためイタリア・ボローニャに在住、日本に一時帰国しての公演となりました。
村上氏の母・悦子さんは本市出身で元音楽教諭。統合前の合川中学校で教師を務めたあと結婚、東京都で教師を続け、退職後も音楽活動に取り組まれています。昨年11月、東京鷹巣会に出席していたお母さんと岸部市長との会話の中で、音楽好きな市長がすでに有名なオペラ歌手として知っていた村上氏が本市ゆかりの人と知り、ぜひ北秋田市でも公演してほしいと本人や関係者に働きかけ、お母さんのふるさとでのリサイタルが実現したものです。
この日は、開幕前に市長がそのいきさつを紹介しながら「多忙な活動の合間をぬって出演したいただいたことに心から感謝申し上げたい。今日は最後まで楽しんで」とあいさつ、公演が始まりました。
リサイタルは2部構成。第1部は「イタリア・カンツォーネの名曲」と題し、日本でも親しまれている「フニクリ・フニクラ」「サンタ・ルチア」などを含め、8曲を熱唱しました。うち3曲は、地元から秋田声楽研究会合唱団(三澤由美子代表)の皆さんが出演し、村上氏から「実力は全国レベル」と評価された歌声で花を添えました。
村上氏は一曲歌い終えるごとに曲の由来や本市とのかかわりをマイクを持ってわかりやすく説明。その軽妙で気さくな語り口でも聴衆を自身の魅力に引き込みました。子供時代の話の中では、母の実家(松葉町・菊地商店)に帰省したときは、商品の配達で一緒に車に乗って森吉や阿仁にも行ったことや、また各公演で使うパンフレットなどの肖像写真は鷹巣の親せきの写真館で撮影したものを使っていることなどを紹介するなど、親しみやすさで本市のファンの心をつかんだようでした。
休憩をはさみ、第2部は「日本の名曲」と「イタリアオペラの名曲」。日本の名曲では山田耕筰作曲「鐘が鳴ります」、成田為三作曲「浜辺の歌」、岡本敏明作曲「ふるさと」、そして本市在住の作曲家で成田為三の研究家でもある元音楽教諭・後藤惣一郎氏作曲による「雪のかたち」「から松」の5曲を歌いました。村上氏は「から松」の歌唱後、会場を訪れていた後藤氏をステージで紹介しながら、その音楽活動に敬意を表していました。
このあと、伴奏の江澤隆行氏によるピアノソロ演奏をはさみ、オペラ「トスカ」より“星は光りぬ”、「トゥ―ランドット」より“誰も寝てはならぬ”をその美声で高らかに歌い上げ、聴衆をとりこにしました。
村上氏の家族は、実家のある東京・日野市で家族でコンサートを開くほどの音楽一家。この日もご両親、夫人ら家族全員で公演に訪れ、母・悦子さんは「鷹巣での公演は市長はじめ関係者のみなさんのおかげ。ほんとうにうれしい」と、とても喜んでいたごようすでした。
公演後、教諭時代悦子さんと音楽仲間であった斎藤礼子さん(=元音楽教諭=71、舟見町)は、「敏明さんの活躍を聞いていたので、今日のリサイタルが待ち遠しかった。期待通りの素晴らしいリサイタルで感無量。これからの活躍も期待しています」と話していました。
なお村上氏は、公演翌日の6日、成田為三の菩提寺・龍淵寺(りゅうえんじ)に墓参、為三の墓に祈りを捧げ、「浜辺の歌」の墓前演奏で遺徳を偲びました。
(2006.8.6)