2019年06月21日
コンテンツ番号3106
マタギ文化の継承と未来への可能性を探る
日本遺産推進事業「マタギシンポジウム」が、6月21日(金)に文化会館で行われ、参加した関係者や市民約400人が講演やパネルディスカッションを通して日本遺産認定を目指す阿仁マタギ文化について理解を深めました。
このシンポジウムは、世代を越えて受け継がれる伝統狩猟の風習や文化の世界を検証し、日本の遺産「阿仁マタギ」として文化の継承と未来への可能性を探ることを目的に、北秋田市日本遺産事業推進協議会(津谷永光会長)の主催で開催したもの。「伝統狩猟の世界、その可能性と未来」をテーマとし、講演とパネルディスカッションの2部構成で行われました。
はじめに、主催者を代表して津谷市長が「当市では、阿仁マタギの世代を越えて受け継がれる伝統狩猟の風習や文化を重要な観光資源としてとらえている。当協議会においては、阿仁マタギを後世に受け継ぐべき遺産として日本遺産登録を目指し、様々な対策を講じている。本日は、マタギ研究の第一人者である田口先生をはじめ、全国で活躍をされている女性ハンターの方々と一緒に伝統狩猟世界とその可能性、未来を探りたいと思う。阿仁マタギが日本の遺産として再認識されることと、全国的に周知され、後世に継承される機会となることを願う」などと歓迎のあいさつを述べました。
第1部では、東北芸術工科大学の田口洋美さんを講師に「阿仁(旅)マタギの真価」と題し、記念講演が行われました。阿仁マタギの歴史について紹介し、長野県や福島県など、全国各地を旅しながら狩猟をする『旅マタギ』が江戸時代後期に活躍していたと解説。
田口教授は「換金経済が普及した江戸時代後期に、旅先で捕らえたクマの毛皮や内臓を販売し、現金に換えて生計をとっていたことは、時代に適応していた。また、阿仁マタギが各地で伝えた、動物の獲り方とその資源の利用の仕方、動物の命の扱い方といった文化は今も残っている」などと話しました。
講演に引き続き、阿仁マタギに関する古文書を研究している宮城県利府高校の村上一馬教諭との質疑応答・対論が行われました。村上さんは「阿仁マタギは各地の古文書に記されており、旅マタギとして活躍していたことがわかる」などと話しました。
第2部では、「伝統の承継~課題と戦術~」をテーマとし、パネルディスカッションが行われました。田口教諭と市商工観光課の小松武志主幹がコーディネーターを務め、パネラーには、女性ハンターの蛯原紘子さん(山形県)、原薫さん(長野県)、鈴木奈津子さん(東京都)、児玉千明さん(福井県)の4人が参加しました。狩猟文化を後世に伝えていくためにハンターの経験から感じていることや意見が多く出され、活発な議論が交わされました。
このシンポジウムを通して、来場者はマタギ文化の価値を再認識するとともに、あらためてその魅力を感じ、日本遺産認定に向けての機運を高めました。