2008年01月26日
コンテンツ番号5356
平成19年度秋田県埋蔵文化財発掘調査報告会
平成19年度秋田県埋蔵文化財発掘調査報告会が市文化会館を会場に1月26日(土)、2日間の日程で始まり、第1日目の26日は、伊勢堂岱遺跡、大湯環状列石、払田柵(ほったのさく)などの遺跡の調査成果について市や県の担当者による報告が行われました。(→開催要項等)
19年度、秋田県内では33件の遺跡発掘調査が行われています。このうち、伊勢堂岱遺跡のように、史跡等の保存整備を目的とする内容確認調査は9件。それ以外の24件は、森吉山ダム関連遺跡のように、開発事業に伴うものです。
報告会は、発掘調査の成果を市民に紹介するとともに、遺跡から解き明かす秋田の歴史に関心をもってもらおうと県教育委員会が主催したもので、報告と合わせ、出土品や写真パネルの展示なども行われています。
会場の文化会館ホールには、約200人の市民が聴講に訪れました。県教育委員会生涯学習課文化財保護室の大野憲司室長、市教育委員会三澤仁教育長のあいさつのあと、トップバッターとして、市教育委員会の担当職員が、「〜よみがえる縄文の聖地〜」と題し、史跡・伊勢堂岱遺跡の今年度の第14次調査について報告しました。
同遺跡は、平成7年に、大館能代空港アクセス道路建設中に発見された縄文時代後期(約4,000年前)の遺跡。これまで、4つの環状列石が確認されており、平成13年には国の史跡に指定されました。
今年度は、4つの環状列石A・B・C・Dのうち、最も南側に位置する環状列石Dの本体を対象として調査を実施。その結果、▽列石Dの石は人頭大ほど(直径20〜30)で、種類は凝灰岩が最も多く、中には、火を受けて赤くなったものもあり、生活の道具を列石に転用したと考えられるものもあること▽「コ」の字状に並べられた石の内側に小石がまかれた状況は、マツリの一種と考えられること、などを紹介。
また、土器を逆さまに埋めて、その周りを石で囲った土器埋設遺構が発見されており、この土器は底が割られ、破片も見つかっていないことから納骨されていた可能性があることを指摘。このほか、▽環状列石の内側では、窪地状に削平し、石の並ぶ部分は土を厚く盛るなどの、「土木工事」の跡が見られること▽列石の外側では、掘立柱建物跡の柱穴、土坑、さまざまな遺溝を発見したことなどについて、写真を交えて説明しました。
このほか、列石では祭祀に関わる石剣や鐸形土製品、三脚石器などが発見されているが、その用途が解明されていないことに触れ、「このような特有の道具が使われていたことや、自然と共生していたことから縄文人は、世界に例をみない独特の世界観を持っていたこと」と述べ、縄文人が同時代、世界的に見ても優れた文化を形成したいたことを紹介。
最後に、今年度遺跡北側の杉木立を伐採し、鷹巣盆地や白神山地方向への眺望を良くする事業を実施する予定であることを紹介し、「当時の人々が、天体の運行や白神山地などの山並みを意識していたことがわかるかもしれない」と、今後の調査が縄文人の精神世界解明に近づくことへの期待を込め、報告を締めくくりました。
伊勢岱遺跡の報告に続き、大湯環状列石、古代城柵「払田(ほったの)柵」、横手市の金沢城跡、墨書土器が出土した大仙市の沖田遺跡について市や県の担当者がそれぞれ今年度の調査の概要について報告を行いました。
また、資料展示室やホールロビーには、各遺跡の代表的な出土品が展示されたほか、発掘時のようすを写真パネルで紹介され、遺跡関係者ほか市民らも、関心をもって見入っていました。
なお明日27日は、森吉家ノ前遺跡、向様田D遺跡、二重鳥(ふたえどり)遺跡など森吉山ダム関連の遺跡について報告が行われるほか、「環境史からみた古代の秋田」と題し、東京大学大学院教授・辻誠一郎氏による講演があります。