2009年06月07日
コンテンツ番号6800
第5回全国山菜文化産業祭
(2009.6.7・8)
第5回全国山菜文化産業祭が6月7日、8日に北秋田市文化会館などで開かれ、約300人が参加し、地域の食文化や山菜の流通などについて記念講演会やシンポジウムなどが行われました。
全国山菜文化産業祭は、全国の山菜生産者などが設立した山菜文化産業協会(飯塚昌男会長)と北秋田市が主催。全国各地で山菜振興に取り組んでいる関係者が情報交換や技術交流を行い、山菜文化産業の展望を語とともに、一般の方々にも山菜に理解を深めてもらうことをを目的に開催されています。
開会式で飯塚会長は「山菜は日本人が誰もが好むもの。大消費地である都会の多くの人々に、もっと身近に旬の美味しさを味わってもらうためにその方法を考えていきたい。それによって生産者の方々の収入増につながり、山に足を運ぶこと、山の手入れをすることは、地球温暖化にもつながることと思っている。木炭の生産やキノコの栽培など特用林産物を組み合わせることによって新たな付加価値が生れる。皆さんが協力し合うことによって可能性が大きく広がる。一緒にその可能性を広げていきたい」などとあいさつ。
続いて、津谷永光市長が「全国からお集まりいただいた山菜の文化や振興に取り組んでいる皆さんを心から歓迎します。近年、食品偽造問題などをきっかけに、国民の食に対する安全安心を求める声が一層高まっている。市の山菜の産業や流通については、これからの取り組みが急がれる重要な分野。市としても、山菜をはじめとする特用林産物の分野において、地域経済に潤いをもたらすように、地元の関係団体とさらに連携して各種施策に取り組んで参りたい」などとあいさつしました。
このあと、オープニングアトラクションとして、鷹巣ばやし普及会が太鼓演奏を披露しました。力強い太鼓のリズムと響きで観客を魅了し、観客からは大きな拍手が送られました。
【記念講演】
記念講演は、東京の有名店「銀座アスター」の総料理長を務め、現在は独立し、「酒家華福寿」のオーナでもある久保木 武行(くぼき たけゆき)氏が「中華料理における山菜料理の現状と将来」と題して講演しました。
久保木さんは「銀座アスターの総料理長を務めていたときは、650人のコックを指揮し、年間650万人のお客さんに食事を提供していた。規模が大きくなると、美味しいものを作るのではなく、まずいものを作らない料理になってしまう」などと総料理長としての苦労も語りました。
また、「食材は売る工夫が大事。一生懸命取り組んで美味しいものができた。これだけではものは売れない。秋田の素晴らしい自然環境で、どのように食材に取り組み、こんなに美味しいものができた。この過程を生産者がマーケットに伝えることが重要。東京築地市場に行けば全国からたくさんの食材が集まる。その中から秋田のものを選んでもらうには、その伝える工夫が大事。 例えば「たらの芽」。パッケージに「秋田 たらの芽」としか書いていない。食材を扱う人は、たらの芽は見たらわかる。全国から集まる食材の中で「秋田のもの」だけではアピールがたりない。東京の人は秋田でどんな苦労をして、たらの芽を生産しているか知らない。『ほかのものと違う』ことを伝えることで食材の価値が上がっていくし、売れる可能性が広がっていく。ぜひ食材には食の履歴書をつけてほしい」などと食材の流通にも工夫が必要と持論を展開しました。
【山菜シンポジウム】
この後、「山菜の文化を、全国の生産地から食卓まで広げよう。」のテーマで行われた、山菜シンポジウムでは県農林水産部次長の星川泰輝氏をコーディネーターに、片岡修二氏(東京シティ青果株式会社取締役 野菜第3部)、後藤陽一氏(JA山形もがみ営農経済部営農販売担当次長)、石井正司氏(有限会社 マルイシ食品代表取締役)、藤嶋佐久栄氏(有限会社 栄物産代表取締役)、高堰幸一氏(山菜採り愛好者)の5氏がパネラーとして山菜文化について、流通、販売、生産、加工の立場で意見を述べました。
シンポジウムの中で、星川コーディネーターの「山村地域の産物である山菜を、都市部の消費者に食べる習慣を広げ、根付かせるにはどのようなことが必要か」との問いに対して、流通を担っている側として片岡部長は、「一般の消費者に食べてもらう窓口は広報、産地では生産者だけでなく地元JA・行政を絡めて観光とのタイアップによる商品の宣伝が一番大切で、宣伝したものを定着させるには、食材の効能、調理方法、食べ方などを個人消費者も業務筋にも分かるようなマッピング方式によって市場に宣伝し、同時に産地として各市場で使ってもらうためには定量・定質・価格による当てに出来る産地作りを図り、生産者・流通業者・消費者の三位一体型を構築することが産地化に必要」と述べた。
片岡部長の発言を受け、定量・定質・価格について産地としてはどのように対処しているかの問いに対して後藤次長は、「定時・定量の出来るものは行い、山取などの出来ないものついては事前に数量の指定されたものついては出来るだけ対応するようにしているが、出来ない場合は出荷先に理解してもらう」、藤嶋氏は、「現在、栽培技術の進歩により周年栽培できるようになった品目については、周年出荷を行なっている。他の品目は、旬の以外の時期にも出荷できるような栽培方法を模索しながら市場に対応している」と述べ、山菜の産地としての現状が話されました。
石井氏は、これまでの経験からなぜ地元の人が持ち込んだ原料で作った缶詰が美味しいかを力説しながら、自社の製品については「鮮度に心がけているとともに、商品の美味しさを知ってもらうため、試食販売を行って少しでも消費者に食べてもらうよう心がけている」と述べました。
供給する現場に携わってきた経験から、高堰さんは「ここ数年、入山者のマナーが悪化しており、自然を大切にしないと山の恵みはいい状況にならない」、「山菜は種類によって取る場所、時期がまちまちであり、そのことを把握することが必要量を確保するためには必要だ」と述べました。
これまでの、パネラーの意見を総括する形で「山菜の需要は年間供給の加工品から旬を伝えてくれる青果までまだまだある、場所とか機器とか、野菜か山菜かでなくアバウトに山菜として考え、それぞれの地域で栽培する人はする人、天然物を採る人は採る人として、売り先、やり方を考え模索していただきたい」と片岡部長のアドバイスがありました。
最後に、星川コーディネーターが「量販店での店頭宣伝等、個々の生産者では無理でも生産者が束になり、部会、JAが一緒に行うことが、信頼される産地への第一歩であり、山菜を消費地に定着させることが出来ると考える」と述べました。
【山菜文化交流会】
山菜文化交流会は、会場をホテル松鶴に移動して行われ、記念講演を行った「酒家華福寿」オーナシェフの久保木武行氏が調理した山菜を中華風にアレンジした料理や、地元婦人会の皆さんが調理した地元の山菜料理が、参加者に振る舞われました。
はじめに、飯塚会長が「集会は予想以上にたくさんの人が参加していただき、意義のある集会でした。皆さんの熱意と明日に対する期待が、いかに大きいかよく分かりました。今日は皆さんと山菜を食べながら、議論して明日の夢を語りたい」と開会のあいさつ。
続いて、津谷市長が「今日の有意義な講演とシンポジウムは、大変参考になりました。全国からたくさんの山菜を愛する方、それぞれ流通や生産をされている方がお集まりです。北秋田市は山菜の宝庫ですし生産もしていますが、それを如何に流通に結び付けるかが大きな課題です。会場には地元婦人会の皆さんが腕によりをかけた山菜の料理と、講演いただいた久保木先生の山菜料理が並んでいます。今日は山菜を食べてご歓談し、北秋田市を楽しんでください」とあいさつ。
会場には、久保木武行氏が調理した「ワラビと蒸し鶏のバンバンジィー」や「アイコの広東風蟹あんかけ」、「シドケと牛肉の香港風細切り炒め」などの料理、また、地元婦人会やJA婦人部の皆さんが調理した「サクの粕漬け」や「タマビロの和え物」、「タケノコのしそ巻漬」などが振る舞われ、全国各地から訪れた参加者は北秋田の山菜に舌鼓を打ちながら、食材としての山菜の魅力を確認していました。
【講話】
文化産業祭二日目となる8日には場所を県立北欧の杜公園に移し、「マタギの歴史と食文化」と題し北秋田市阿仁猟友会会長 松橋光雄氏の講話があり、マタギの由来、マタギとしての自らの経験、巻き狩りの方法とかが語られ、参加者は興味深く聞き入っていました。
【山菜採り体験】
引き続き、公園の近くで行われた山菜採り体験では、参加者がウワバミソウ(みず)の自生地している林に入り、山菜採り体験をしました。