2010年02月12日
コンテンツ番号7691
これからも乗って残そう内陸線
秋田内陸縦貫鉄道の全線開業20周年記念式典が2月12日(金)、阿仁ふるさと文化センターで開かれ、招待者や関係者など約200人が参加して、これまでの歴史を振り返りながら開業20周年を祝いました。
秋田内陸縦貫鉄道は、昭和59年に旧国鉄阿仁合線、角館線と建設線を引き継いで一体運営するために設立。昭和61年に既開業区間の転換を受けて秋田内陸北線、秋田内陸南線として暫定開業。平成元年に未工事区間が開通し、鷹巣から角館までの全線開業を果たしました。
全線開業時の平成元年乗車人員は、107万9000人で順調なスタートとなりました。しかし、沿線地域の人口減少や少子高齢化などの原因により年々減り続け、平成19年度では44万3270人となり、ピークの半分以下となりました。同時に存廃問題が議論され、存続のため沿線地域や全県を対象にした大規模な乗車運動が展開されました。その結果、平成20年度には47万541人となり、3年ぶりの増加となりました。現在も、再生計画をもとに各種イベントの実施や内陸線応援キャラクターないりっくんをを活用しての利用促進活動などが積極的に展開されています。
記念式典で、若杉清一代表取締役社長は「内陸線の乗車人員は、少子高齢化や交通手段の多様化によって、開業時の半分以下となっております。この厳しい状況を乗り越え、沿線地域とともに価値を高め、内陸線が秋田名物と讃えられるまでその魅力を育てていかなければならない。基本は徹底した安全輸送の推進と心温まるおもてなしです。また、観光交流の拡大として、国内ばかりではなく、東アジアを視界に入れた広域的な観光や交流事業を推進しての新たな収入が必要です。年間2億円の損失で成り立つ経営が不可欠です。英知を結集し、多様な取り組みを行い地域の総力戦として挑戦したい。そのためには、地域特性を活かした個性ある展開を具体的にスピードをもって取り組むことが重要です。地域に生きる一人ひとりの声と喜びを乗せて内陸線は懸命に走り続けます。未来に繋げる大切なレールです。内陸線が今日あることを皆さんと喜び、明日あることを誓い。記念すべき今日共に新たな出発をしましょう」などと式辞を述べました。
堀井啓一県副知事は「このレールをどうするかということで、この数年にわたって秋田県、北秋田市、仙北市、会社との間で様々な話し合いを続けてきた。しかし、課題も多く話し合いで一定の方向性を生み出すまで相当な期間を要した。経営の在り方として、会社の努力や地域の方々の協力をいただきながら、毎年の経営を2億円の損失に納めることに一定の目途がたったこと、レールや橋りょうの保守についても待ったなしの厳しい現実があることで、県・両市・会社で新たな合意に基づき出発することとした。県としても内陸地域において国道105号と並ぶインフラとして主体的に責任をもって、レールや橋りょうなどの基盤の維持補修にあたっていきたい。また、県内外にこの地域の素晴らしい観光資源をPRすることによって内陸線の利用を促進してまいりたい」などと国道と並ぶインフラとして基盤整備を行うことを述べました。
津谷永光市長は「平成元年に94.2キロの長い路線が全線開通となり、地域住民にとって大きな悲願が達成され、その喜びもひとしおであった。鷹巣からの一番列車の出発式でホームにたくさんの人々溢れんばかり集まり、みんなが笑顔で見送った思い出がよみがえります。地域にとってはなくてはならない内陸線ですが、多額の費用がかかるレール交換などの安全対策工事が課題となっております。本日の基本合意により、今後の方針が決定されますが、内陸線の安全安心、定期運行がなお一層図られサービスの向上に繋がることに期待します。沿線で撮影された韓国ドラマアイリス効果で、韓国のツアー客などの利用が増加している。このような機会を絶好なチャンスととらえ、官民一体となった受入れ体制を確立し、更なる誘客が高まることを期待したい」などと官民一体となった協力による誘客効果に期待を寄せました。
続いて、門脇光浩 仙北市長、岸谷克己 東北運輸局鉄道部長、鈴木定平 秋田内陸縦貫鉄道を守る会会長の祝辞のあと、内陸線に支援や奉仕活動などで貢献した41団体に対し、感謝状の贈呈が行われ、労働奉仕活動(14団体)を代表して愛郷愛護会(近藤健一郎会長)、無人駅の環境美化活動(23団体)を代表して荒瀬自治会(湊榮興会長)、駅の利便性向上及び美化奉仕(4団体)を代表して仙北市商工会女性部(井上好子部長)に若杉社長から感謝の言葉とともに感謝状が贈呈されました。
また、会社の幹部社員から各課の目標が示されたあと、若杉社長と社員一同が「内陸線は徹底して安全にこだわります。内陸線は徹底しておもてなしを提供します。内陸線は皆さまの笑顔と思いを、しっかり未来を結びます」などと声高らかに内陸線宣言が読み上げられ、これからの秋田内陸縦貫鉄道株式会社の決意が表明されました。
引き続き、「秋田内陸線の持続的運行による基本合意書」の調印式が挙行され、堀井県副知事、津谷北秋田市長、門脇仙北市長、若杉社長がそれぞれ署名捺印のあと、かたく握手を交わして、秋田内陸線を今後も存続していくため、経営改善のあり方や安全確保のための老朽化施設の改修などの方策や役割について合意しました。
アトラクションでは、新しい内陸線キャラクターのクマの名称が「森吉のじゅうべぇ」と発表されました。キャラクターの名称公募には1035通の候補が寄せられ、その中から斉藤珠美さん(由利本荘市)が考案した同名称が選考されました。斉藤さんは「『縦貫鉄道のじゅう』と『クマの英語ベアー(bear)』を組み合わせて『森吉のじゅうべぇ』とした」などと名付けの理由を紹介しました。また、わらび座による「応援メッセージ」も上演され、会場から大きな拍手がおくられました。
内陸線阿仁合駅前では、内陸線の今昔を写真でたどる「内陸線写真展」やサポーターによるミニライブステージが展開されたほか、沿線のお母さんたちが持ち寄った鍋っこ(鍋もの)が振舞われる「駅市」などが開催され、内陸線の全線開通20周年を祝いました。
(2010.2.12)