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42年ぶりの上映に感慨ひとしお〜東宝映画「林檎の花咲く町(辻美沙子原作)」
〜鷹巣農林高校創立96周年記念映写会〜
映写会を企画した鷹農生徒会の佐藤竜弥会長(農業科学科3年)

 本市(旧鷹巣町)出身で作家の辻美沙子氏(1934-1999)原作による映画「林檎の花咲く町(昭和37年・東宝作品)」が9月1日(木)、北秋田市文化会館ホールで上映され、詰め掛けた観客らが、昭和38年に上映されて以来42年ぶりという懐かしい青春映画を観賞しました。

 この上映会は、県立鷹巣農林高校(北林強校長)の創立96周年記念事業として行われたものです。原作者の辻氏が同校のOG(昭和25年入学普通科3期生)であることなどから、在校生をはじめ広く市民に氏の業績の一つであるこの映画を紹介しようと、製作会社である東宝本社に直接交渉し、眠っていたフィルムを借り上げての上映会となりました。

北林校長が映画の原作者・辻美沙子氏の業績などを紹介

 辻氏は昭和9年、現在の韓国・全羅南道木浦(もっぽ)市生まれ。家族で日本に引揚げた翌昭和21年に鷹巣国民学校6年に編入、新学制発足前後の鷹巣中学校を経て昭和25年に鷹巣農林高校普通科に入学、2年生まで鷹巣で過ごしました。

  小学校時代から源氏物語を原典で読むなど読書に明け暮れ、高校では文芸部と演劇部に所属し、詩歌や演劇脚本などで当時から文才を見せていたと言われています。その後東京へ転出、大学卒業後から少女小説の執筆を中心に創作活動を始めています。当時は、同じ少女小説の分野で活躍していた田辺聖子と並び称される才能を見せていたようです。昭和36年には家の光新人長編懸賞小説で「林檎の花咲く町」が弟一席で入選、翌37年に白川由美主演で映画化されました。その翌年の昭和38年に旧鷹巣町の映画館「東宝」で上映されています。

 映写会の開催に当たっては、同校生徒会(佐藤竜弥会長)がチラシやポスターのデザインを手がけるなど市民に向けて積極的にPRし、この日は、午後と夕方から行われた2回の上映会ともほぼ満席の盛況ぶりでした。

午後の部では全校生徒が鑑賞。夜の部と合わせ2回の上映会はいずれもほぼ満席となった。

 同校の生徒全員も観賞した午後の部の上映会で開会のあいさつに立った生徒会長の佐藤君は、「この映画の原作となった小説を書かれた偉大な先輩を誇りに思う。この上映会で辻さんが小説で表現したかったことを汲み取っていただければ幸い」と、辻氏の略歴を紹介しながら、映写会の趣旨を述べていました。

 続いて、北林校長が、「我校も今年で創立97年目を迎え、平成21年には創立100周年となる。この長い歴史の中で、貴重な宝がいくつも生まれた。由緒のある校歌や農林博物館、プロ野球選手の中嶋聡やスキーの高橋大斗など優れたスポーツ選手も輩出している。そして、作家・辻美沙子さんもその一人」とこの映画について辻氏の書かれた文章などを紹介しながら、「42年前を思い出しながら楽しんでください」と、あいさつを述べました。

 また、辻氏の生涯と業績についての資料をまとめられた、元鷹巣町収入役の河田弘美氏(鷹巣字下家下)が会場で紹介されました。河田氏は町職員としての退職にあたり、自費で辻氏に関する資料集を発行されていますが、この映写会は、河田氏の研究活動やその資料がきっかけとなっています。

 映画は、秋田の農業高校「佐竹高校」が舞台。ここに、新任の女性教師(白川由美)が赴任し、同僚教師(中丸忠雄、藤木悠ら)や教え子たち(高石かつ枝、峰岸徹、長谷川明雄ら)と部活動と進路問題、恋愛を巡る葛藤や、心の交流が描かれる青春映画。高石かつ枝が映画で歌った映画と同名の主題歌も、当時大ヒットしています。

 映画の題名にある「林檎(リンゴ)の花〜」は、鷹巣農林高校のりんご園がモデル。当時、映画のロケは東京に近いりんごの産地として知られる長野県で行われたようですが、満開のリンゴの花の下を、高石かつ枝が主題歌を歌いながら歩く場面は、この映画の代表的なイメージになっています。ただ、原作者の辻さんは、秋田で撮影が行われなかったことをたいへん残念に思っていたそうです。

 ほぼ90分ほどのこの映画は、セピア調の「総天然色」で、超大作などで使われる横長の「シネマスコープ」というめずらしいサイズ。また、いわゆる「雨」といわれるフィルムの傷も目立つ作品でしたが、白川由美の美しさ、高石かつ枝や同級生たちの素朴な笑顔、そしてバレー部やラグビー部のクラブ活動など活発な高校生活が描かれ、たいへん明るい青春映画でした。ただ、映画のテーマは「現代っ子高校生たちのおりなす青春群像」にスポットが当てられているため、原作に描かれている当時の鷹巣農林高校のようすや地方色は控えめになっています。そのため、ぜひ原作もお読みいただくことをお勧めします。

意に反して秋田の高校に赴任した桂子(白川由美)は、東京に戻されようと音楽の時間にジャズを教え教員たちの非難を浴びる 生徒会やクラブには所属せず、進学にこだわる館岡(峰岸徹)は、桂子に対しても反抗的だった。 農業講師兼ラグビー部顧問の五代儀(中丸忠雄)は、桂子に好意を持っている 満開のリンゴの花の下で語り合う真由美(高石かつ枝)たち。この映画の代表的なイメージとなっている
鷹巣農林高校を彷彿とさせる県立佐竹高校の校舎。木々に囲まれ、背景には森吉山を思わせる山並みが リンゴ農家の家業を手伝う西村(長谷川明雄)を訪れた真由美(高石)。互いに好意を持っているが、言い出せない 真由美がキャプテンを務めるバレー部の対戦場面。相手校はなぜか「琴丘女子」(原作では、真由美は演劇部に所属) 卒業前の最後のホームルームで歌う同級生たち。この後、受験で上京する者、就職で地元に残る者と、全員が旅立つ。

 上映後、ホールから出てきた生徒たちに感想を聞くと、さすがに40年以上前の高校生活を描いたものだけに戸惑どった様子でしたが、「進路問題に悩む場面が身につまされた」「今よりずっと活発」「基本的なことはそれほど変わらない」と、今の学校生活に照らして答えてくれました。

 また、午後の部にはこの日同期会を開催予定の、辻さんの同期生の皆さんが鑑賞に訪れ、「昔の高校時代を思い出し、とても楽しかった。これも佐伯さん(辻氏の当時の本名)のおかげ」と、感慨を述べていました。特に、登場人物の姓が「相馬(白川由美)」や「五代儀(中丸忠雄)」「池端(高石かつ枝)」など原作にも登場する役名は、同期生や友人の姓でもあったことなどから、懐かしさもひとしおの様子でした。

 映画は、残念ながらビデオ化されていないためこのような自主上映会以外では見ることができませんが、原作本や辻氏の他の小説や資料は市文化会館内の鷹巣図書館で閲覧することが可能です。こちらもぜひ一度ご覧ください。

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