2023年01月15日
コンテンツ番号15341
伝承行事で五穀豊穣を祈願
(2023年1月15日)
今年の稲作の豊凶を占う小正月行事の「雪中田植え」が1月15日(日曜日)に大太鼓の館前で行われ、秋田たかのす農業協同組合(小笠原隆志代表理事組合長)や関係者が田の神にお神酒などを供えて豊作を祈願しました。
この「雪中田植え」は、農家が1年の仕事始めの儀式として1.8メートル四方の水田に見立てた雪の田んぼを作り、稲わらや豆からを束ねた「稲」を植え、1年の作柄を占う民俗行事で庭田植えとも呼ばれています。
かつては、干ばつや台風などの邪気を祓い、神聖な田の神に五穀豊穣を祈る儀式として秋田県内でも古くから行われていて、江戸時代の紀行家・菅江真澄も八郎潟周辺で行われた行事を1810年に「小正月の田植え」として絵図に残しています。現在では北秋田市「綴子」のほか、県内でも限られた地域で伝承されているようです。
ここ綴子地区に伝わる「雪中田植え」も一度途絶えましたが、昭和58年に稲作づくりに執念をかけた篤農家の故・高橋佐一郎氏(綴子上町)によって復活されました。しかし、同61年に高橋氏が他界したことでまた途絶えてしまいましたが、同63年より地域の農業後継者となる旧綴子農業協同組合青年部がその遺志を受け継いで再復活させ、現在は秋田たかのす農業協同組合青年部(鈴木豊部長)が継承して今日に至っています。
この日の儀式を前に、鈴木青年部長は「農業を存続していくためには継続と発展という言葉を耳にするが、これに付け加えて、私たち作り手がへこたれないという気持ちを持つことが大事。前を向いて、未来に向けて、しっかりと営農計画をつくり淡々と実行していくことが農業発展のためになると信じている。米どころ秋田、秋田県産、あきたこまちが、まだまだ捨てたものではないぞという強い思いを持ちながら日々の営農、そして今日の雪中田植えに臨みたい」などとあいさつしました。
次に、小笠原代表理事組合長が「昨年8月の豪雨により、農業の維持が深刻な状況に陥ってしまった。農業は天候や災害に見舞われることはあるが、日本の食糧を生産しているということで、農家の皆さんは国民の命を守っているという使命がある。そのような意味でも、持続した営農活動をお願いしたい。営農活動を続けることにより、この北秋田地域の環境・水・農地の保全が保たれている。農協としてもこれまで以上に営農活動に努め、市と連携しながら取り組みを進めてまいりたい」などとあいさつしました。
また、来賓の津谷市長が「この雪中田植えは、1年の仕事始めの儀式として、干ばつや台風などの邪気を祓い、神聖な田の神様に五穀豊穣を祈願するとともに本年の稲の作柄を占う大切な行事である。農家の皆さんが1日も早く作付けができるよう災害復旧に取り組むとともに、安心して営農を継続できるよう国・県、JAをはじめとする関係機関の皆さまとしっかりと連携し、生産農家の立場に寄り添いながら支援してまいりたい。皆さまにとって、本年が素晴らしい1年となり、今年の出来秋が五穀豊穣に恵まれるよう祈念申し上げる」などと祝辞を述べました。
続いて儀式に移り、同青年部の小坂亮太さん(栄)が田植え人を務め、けら、菅笠姿の昔ながらの装いで、約30センチ間隔で4条4株ずつ計16束の「苗」を丁寧に植え付けました。
田植えを終えた後、虫除けのためにスス払いのワラほうきで雪田をお祓いし、田の目印としてそのワラほうきを雪田の中心に逆さに立て、大根の煮しめやナマス、デンブ、お神酒などを供え、参加者が豊作と米価の上昇などを祈願しました。
今年も4回目となる田植え人を務めた小坂さんは「今年は平穏に天候にも恵まれ、作物が良く育ち豊作となることを願っている」などと話しました。
来月2月1日(水曜日)には、作占いとなる「雪中稲刈り」が同所で行われる予定となっています。
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あいさつする鈴木青年部長 -
あいさつする小笠原代表理事組合長 -
祝辞を述べる津谷市長 -
スス払いで雪田をお祓いする小坂さん