2022年04月09日
コンテンツ番号14193
世界文化遺産となった縄文の里でサケの稚魚2万匹を放流
(2022年4月9日)
伊勢堂岱遺跡世界遺産登録推進サケ放流事業の「第12回カムバック縄文サーモン」が、4月9日(土曜日)に昨年世界文化遺産登録となった国指定史跡「伊勢堂岱遺跡」の下を流れる湯車川で行われ、市民約60人が参加して、サケの稚魚約2万匹を放流しました。
この放流事業は、「伊勢堂岱遺跡」の世界遺産登録推進の一環として、同遺跡の一般公開前の毎年この時期に行われ、平成23年から始まり今回で12回目を迎えました。
かつて縄文人も遡上したサケを食料として活用していたと考えられており、湯車川をサケが遡上するふるさとの川の環境保護を図りながら、遺跡周辺を「カムバック縄文サーモン」の中心地として、世界遺産登録の推進に大きく貢献することを目的に、市教育委員会が主催、伊勢堂岱遺跡ワーキンググループ(佐藤要代表)、鷹巣漁業協同組合(湊屋啓二組合長)の共催で行われてきています。
この日の放流事業には、ワーキンググループ、ボランティアガイド、ジュニアボランティアガイド、地元自治会、一般市民など約60人が参加しました。
「伊勢堂岱縄文館」で行われた開会式では、はじめに、これまで遺跡の保存・活用に長きに渡って尽力され、今年亡くなられたワーキンググループ前代表の佐藤善壽さんに対し、参加者が哀悼の意を示し黙とうを捧げました。
次に、主催者を代表して津谷市長が佐藤前代表の功績や関係者に感謝を述べたあと「縄文時代から世界文化遺産となった遺跡のすぐ下を流れる川にサケが遡上してくる、海を回遊してくるという循環、海と陸の豊かさ、まさに世界中が声を大きくして掲げているSDGsを縄文時代から今日まで続いていることは大変すばらしい。そして、この地にサケがのぼってくる豊かな環境で、世界文化遺産登録となった遺跡があることは、北秋田市民にとっても大きな誇りである。このカムバック縄文サーモンの事業を通じて、多くの方々に遺跡そのものだけでなく、心や歴史を刻み込んでいただきたいし、地域全体でしっかり守っていかなければならない。これから力を合わせて、遺跡の保存、活用、発信、そして多くの方々が訪れてくれる伊勢堂岱遺跡を目指して取り組んでまいりたい。今日は元気に放流しましょう」などとあいさつしました。
続いて、同遺跡ワーキンググループの佐藤代表が「年度初めの事業となり、これから前代表の思いを引き継いで努力していきたい。伊勢堂岱遺跡の価値は、約1万5,000年も続いた縄文社会にあると感じている。現在、戦争や環境汚染、環境破壊が行われていることで、自然災害が毎年生じている。この地域と地球を守っていくためには、縄文に学んでいかなければならないと思う。縄文人にとっては私たちが未来人であるが、今度は私たちが未来のため、地域を残すために取り組んでいきたい」などとあいさつを述べました。
このあと、昨年遡上したサケの映像が流され、最後に鷹巣漁業協同組合の湊屋組合長が「男鹿市から平均6センチほどのサケの稚魚を運んできた。今回放流すると、平均4年後、約4、5キログラムで70センチほどに成長したサケがこの湯車川に戻ってくる。回帰率は0.7パーセントくらいといわれているため、2万匹となると140匹から200匹の間で戻ってくると思われる。厳しい環境の中で海を回遊し戻ってくるというすごい魚であり、縄文人も毎年このサケを貴重な食料として食していたと思われる。これまで、関係者の皆さんのこの事業の地道な活動が、世界文化遺産登録の一助になったものと感じている。この事業に感謝するとともに、今後も皆さんで守っていきたい」などとサケの成長についてなどの説明と諸注意を交えてあいさつを述べました。
参加者らは、事業スタッフから体長6センチほどの稚魚をバケツに小分けしてもらい、津谷市長とともに放流したあと、元気に湯車川を泳ぐ稚魚の姿を見守りました。
近年では、放流事業の継続効果もあり、10月中旬から11月上旬ころに体長約70センチほどのサケの遡上が確認されており、昨年も約4年前に放流した複数匹の遡上したサケが地域住民や来訪者を楽しませています。