2008年06月15日
コンテンツ番号10780

おことばを読み上げる天皇陛下
第59回全国植樹祭に当たり、ここ「北欧の杜公園」において、全国からの参加者と共に植樹を行うことを誠に喜ばしく思います。
きのう発生した岩手宮城内陸地震によって各地で被害が生じました。行方不明になった人々が速やかに救出されるよう念じており、また亡くなった人々の遺族や災害を受けた人々の悲しみや苦労に深く思いをいたしております。
現地では余震が続いていると聞いておりますが一刻も早く人々の生活の平安が取り戻されることを願っております。
秋田県において全国植樹祭の前身である第19回「植樹行事並びに国土緑化大会」が開催されたのはちょうど40年前のことになります。それから10年後、この植樹行事の行われた田沢湖畔で第2回全国育樹祭が行われ、私どもは昭和天皇、香淳皇后お手植えの秋田スギの枝打ちと施肥を行いました。
当時の記念植樹の秋田スギは立派に育ち、「県民の森」として林業研修の場や県民憩いの場として利用されていると聞いております。 わが国は国土の3分の2が森林に覆われており、水に恵まれた緑豊かな国です。しかし一方、急峻な地形が多く、国土を豊かに潤す水も大雨や台風のときには大きな災害をもたらします。
このような環境の下で、我が国の人々は木材資源の維持、災害の防止や水源のかん養などのために森を育ててきました。秋田スギの美林も人々の永年にわたる努力の賜であり、その基礎は19世紀に賀藤景林(かとうかつしげ)、景琴(かげきよ)父子による植林活動によって確立されました。
近年科学技術の進歩に伴って研究が進み、森林の持つ様々な機能がより正確に理解されるようになりました。川の上流に植林すると、その川の河口や沿岸の海のプランクトンが増殖し、水産資源を豊かにすることも分かってきました。
また温暖化防止に森林が果たす役割についても大きな期待が持たれています。我が国の人々が古くから親しんできた木や森について、過去の経験と現在の知識を基にして更に理解を深めていくことが大切と思います。
この度の全国植樹祭を契機として、更に多くの人々の間に森づくりに参加していく気運が高まることを願い、式典に寄せる言葉といたします。