2017年02月26日
コンテンツ番号3556
地域の歴史と伝統を活かしたまちづくりを考える
阿仁根子地区に伝わる国指定重要無形民俗文化財「根子番楽」をテーマにしたまちづくり講演会が、2月26日(日)に、根子児童館で開かれました。地域住民たちが番楽の由来や歴史、保存継承に関する講演に耳を傾け、地域の歴史と伝統を活かしたまちづくりについて理解を深めました。
この講演会は、根子番楽を広く知ってもらい後世に伝えようと出身者たちで組織した根子番楽後援会(佐藤恭一会長)が、北秋田市の市民提案型まちづくり事業の助成を受けて開いたものです。
はじめに、県立博物館学芸主事の丸谷仁美氏が「国指定重要無形民俗文化財 根子番楽について」をテーマに講演しました。丸谷氏は、数多く指定されている秋田県の重要文化財のうち、根子番楽が含まれる民俗文化財について「地域に暮らしてきた人たちが、どのように生きてきたのかを証明するもの。中でも民俗芸能は信仰に関わりのあるものかどうかが判断の基準になる」と説明。
一般的な番楽について「獅子舞が重要な役割を担っている」とした上で、「根子番楽は獅子舞が行われず、勇壮な武士舞を中心に継承され、小道具を使って舞をしているのが大きな特徴。文学的に優れているとされる歌詞や動きが大きい魅せる舞など、ほかの番楽には見られない点も多い」と指摘。「なぜこのように継承されてきたのかを確かめるため大規模な調査が必要。その上で、時代の変化に対応した継承を皆で考えていく必要がある」と話しました。
次に、エッセイストのあゆかわのぼる氏が「少子化から地域の文化遺産をいかに継承するか」をテーマに講演しました。あゆかわ氏は、人口減少が進み、花輪ばやしや西馬音内盆踊りなど県内の伝統芸能も後継者不足に悩んでいるという現状を指摘した上で、仙北市白岩地区の取り組みを紹介しました。白岩地区では、停滞する地域の現状打破を目的に、2002年から住民有志のグループ「白岩村おこし~プロジェクトS~」が地域おこし活動を始め、中世と近世の城址を会場に光のページェント「白岩城址燈火祭」の開催など、住民が一体となった取り組みを行っています。
続いて、あゆかわ氏は、能代市二ツ井町の「富根報徳番楽」についても触れ、二ツ井町に向能代から嫁いできた一人の女性が、地域を動かして伝統芸能を復活させた事例を挙げ、番楽が復活してから地域が活性化したことを紹介しました。
また、由利本荘市三ツ方森集落では、ワラビの根から採れるワラビ粉を使った「根花餅(ねばなもち)」と「ミズたたき」などの山菜料理を特産品としており、あゆかわ氏は、こうした特産品を活かしたムラビジネスについても紹介しました。
あゆかわ氏は、「文化遺産でも伝統芸能でも人がいないとできない。やらなきゃだめだと思うと肩に力が入ってうまくいかないので、楽しむことが大事。文化遺産・伝統芸能を残すことよりも地域をつくることが先だろうと思う。外からのいろいろな提案を受け入れてそれを活かしていくことが大事」と指摘し、「『根子特産品』を作ったらどうか。6次産業による地域特産品を開発し、それを外に売る。そういうことをして地域をつくっていくと、ここに人が来るかもしれない。あるいはここにいる若者たちがこのまま残って家庭を持つかもしれない。そうすると根子番楽も継承され、この地域が変わると思う」と話しました。
講演後は、2人の講師による対談や参加者との意見交換(質疑応答)が行われ、根子番楽の保存継承と今後のまちづくりについて考えを深めました。