2005年11月20日
コンテンツ番号5144
倉本裕基ピアノコンサート
韓国ドラマ「冬のソナタ」などでもオリジナル曲が使われているピアニスト倉本裕基氏のコンサートが11月20日(日)、市文化会館で開かれ、氏の奏でる甘く、美しいピアノの旋律が満場の観衆を魅了しました。
倉本氏は6歳からピアノを始め、早くから才能を発揮、大学では数学や物理を専攻しながら音楽を学ぶという異色の経歴を持つピアニスト。1986年、CDデビューし、これまでに創作したオリジナル曲は260曲以上。日本よりも先に韓国で人気が高まり、韓流ブームのきっかけとなったTVドラマ「冬のソナタ」でも、チュンサン(ぺ・ヨンジュン)の死の悲しみに暮れるユジン(チェ・ジウ)の背景音楽として倉本氏の『霧のレイクルイーズ』が流れていたことでも知られています。
昨年暮れには、「冬のソナタ」に始まる韓流ブームの音楽面の支え として、日韓両国の文化交流に大きな貢献を果たしたことが評価され、日本レコード大賞特別賞を受賞。また、今年4月からは「冬のソナタ」の主題歌を歌った韓国人歌手のRyu(リュウ)とともにNHK教育テレビ「ハングル講座」の生徒の一人を務め、飾らない人柄で人気を博しています。
倉本氏の夫人・美穂子さんは鷹巣出身。今回のコンサートは、以前から美穂子さんの親戚や同級生などの間で倉本氏の鷹巣公演を期待する声があったことや、文化会館の自主事業として市ゆかりの音楽家の公演を検討していたことなどから、氏に本市での公演を打診したところ、快諾を得て実現したものです。
東北地方での開催としても初となったこの日のコンサートは、前売券も公演の10日ほど前に売り切れるほどの人気ぶり。ふだんはCDでしか聞けない氏の演奏をじかに聴けるとあって、600席の座席を埋め尽くしての開演となりました。
プログラムは倉本氏のオリジナル曲を中心に構成され、音楽活動を始めた頃作られたという「妖精の森から」「泉のソネット」「風の詩」など自然をテーマとした曲でオープニング。どの曲もやさしく甘く、「究極の癒し」といわれている倉本氏の音楽世界に一気に引き込まれます。
韓国映画やテレビドラマに使われた曲も演奏されました。「ロマンス」はイ・ビョンホンが主演した映画「甘い人生」のテーマ曲に、また、「オンディーヌ」は女優ソン・ヘギョやシン・ユミが出演したテレビドラマ「秋の童話」の挿入曲になった曲です。倉本氏は演奏が終わる都度、その曲についてわかりやすく説明します。韓国では、音楽は撮影が終わった後に編集、挿入されるのが一般的。「ロマンス」は監督から撮影前にこの曲を使いたい、との要望があり、ラストシーンでは撮影時にも現場で流され、感極まって涙ながらの撮影になった、とのエピソードも披露してくれました。
そして、氏が「自分でも好きな曲の一つ」と話す「霧のレイクルイーズ」、ノ・ムヒョン大統領が公式の場に入場する際に使われたという「ヴァージンロード」と演奏が続きます。倉本氏は、ご夫人のふるさとでの演奏会ということもあり、はじめは少し緊張されていたようすでしたが、演奏途中では夫人との関係を「阿仁合(おにあい)のカップル」などと、「しゃれ」を交えた軽妙なトークにも会場は大受けでした。
休憩をはさんで始まった後半は、お気に入りの曲「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン(Bart Howard作曲)」、やディズニー映画「ピノキオ」の主題歌「星に願いを(Leigh Harline作曲)」から始まり、再び氏のアルバムの中から7曲が演奏されました。この中の一曲「美しい穂が実るとき」は、愛妻・美穂子さんのために作られた曲。やわらかな旋律の中に奥深い愛情が伝わってくる曲でした。氏はCDアルバムの中の曲紹介に「〜いつも優しい心で私を支えてくれる妻に捧げたい」と記しています。
そして予定の21曲を弾き終え、アンコールは米内沢出身の作曲家・成田為三の「浜辺の歌」で締めくくっていただきました。
倉本氏のコンサートは、韓国では3000人収容の会場で行われる公演のチケットも即日完売になるほど人気があります。これは、韓国の音楽のほうが「冬のソナタ」のが曲でもわかるように、美しいメロディーとピアノを中心とした楽器を重視しているからだと言われています。最近の韓流ブームによって日本で脚光を浴びるといった逆輸入ともいえる状態ですが、飾らず自然体で音楽活動を続ける倉本裕基氏の人気は北秋田市でも一段と高まりそうです。