2005年08月01日
コンテンツ番号5050
忘れかけられた成田為三ピアノ作品2曲を発掘
〜浜辺の歌音楽館演奏会で発見者により県内初演〜
男声(テノール)二人とピアノによるソロ・デュエットコンサートが8月1日、浜辺の歌音楽館を会場に開催されました。
テノールには、日伊声楽コンコルソに入賞されている渡辺直人氏、小澤征爾オペラプロジェクトに出演されていた鳴海優一氏、ピアノには、各地でコンサートを開催され、当地にもファンの多い菊池大成氏による演奏で県外も含め各地から集まった聴衆を魅了しました。
男性の最高音で主にソロとして演奏されることが多いテノールが二人という珍しい編成で「嵐の彼方へ」をはじめ14曲を風格の漂う迫力ある独特な歌声とピアノ演奏が為三ロボットのある館内一杯に響き渡りました。
ピアニストの菊池氏は、ともすれば童謡作曲家と思われがちな成田為三の、それとは全くタイプの異なるピアノ作品の業績に演奏をとおし実感され、為三の研究調査を続けています。現存するピアノ作品の資料は、戦災により貴重な資料が失われ、しかも終戦まもなく他界した為三の研究にあっては、もはや戦前の出版物に頼るしかなく、限りある範囲であることから新資料はあるはずがないと思われていたそうです。
ところが、5年程前に国立音楽大学付属図書館内の「音楽雑誌・掲載楽譜リスト」中に、これまで忘れられていた2曲が収載(データのみ)されていたのを発見しました。1曲は「秋ー月を仰ぎ(四季のうち)」で神秘的で現代的な調べとなっており武蔵野音楽大学図書館に所蔵、もう1曲の「Rondo」は、対照的な作品でテンポのある古典的な曲調で国立音楽大学図書館に所蔵されているのを確認されました。すぐに浜辺の歌音楽館に資料の存在を知らせ、ついにこの日、為三の業績を顕彰する記念館での初演となったものです。
制作年は、現段階では残念ながら特定することはできませんが「秋−月を仰ぎ(四季のうち)」は、71年前の昭和9年、為三が41歳を迎える年度分として刊行されている「日本作曲年鑑 昭和9年度版」に、また「Rondo」は「同年鑑 昭和16年度版」に掲載されていることから、それ以前であることに間違いありません。
為三研究の第一人者で知られる後藤惣一郎氏(鷹巣あけぼの町)は「作品の存在自体は知っていましたが、楽譜に触れたことはありません。大変貴重な資料です。県内では、はじめての演奏でしょう」と新たな資料の存在に喜んでおられました。
この日の演奏会には、3月に改修され、身支度を整えた為三が、この2曲を掘り起こしたピアニストの菊池氏とともに音楽館の初演ステージに立ち、ほんの少しの緊張とうれしさが表情にあらわれていたように感じました。
また、演奏会は盛り沢山の内容で、2007秋田わか杉国体の山岳競技が森吉地区で開催されることから、そのPRソングとして、山の愛好家に知られている「森吉山讃歌(庄司国千代作詞 金新佐久作曲)」を公開録音しました。今後CD化し、国体PRに一役買うことになります。