2006年11月24日
コンテンツ番号4757
〜「森づくりシンポジウム」〜
北秋田地域振興局が主催する「森づくりシンポジウム」が24日、市交流センターで開かれ、林業関係者らが講演とパネルディスカッションで地域の林業・木材産業の活性化について課題を探りました。
秋田県は、古くから秋田スギの産地として発展してきましたが、木材価格の低迷や後継者難など林業をめぐる情勢の変化により、たいへん厳しい状況に置かれています。このシンポジウムは、これからの林業経営のあり方を探り、林業・製材業などの活性化につなげることを目的として開催されたもので、北秋田地域ほか近隣の林業農家、森林組合、製材加工業者ら約300人が参加、また鷹巣農林高校林業科の生徒も聴講に訪れていました。
開会式では、北秋田地域振興局の武藤冨士雄局長が、「北秋田の林業は、かつては地場産業として栄えたが、競争力を失い出荷量も減少しつづけている。これは、高齢材に長く頼りすぎ、一般材への取り組みが遅れたことが原因の一つ。しかし最近は人工林の成熟化が進んでいる。当地域は一大産地。これから伐採期を迎える地場産材の有効活用を図り、振興に結び付けたい」などとあいさつ。
講演会の講師は、鹿児島大学教授で、これまで九州と東北の林業・木材産業に関わってきた遠藤日(くさ)雄氏。海外の林業・木材産業にも詳しく、林野庁などの委員も務められ、また「転換期のスギ材問題」「スギの新戦略」など木材、林業などについての多くの著書があります。
講演では、『産地再生に向けて、今取り組むべきこと』と題し、南九州で出荷される国産材のシェアが全国平均より大きく上回っていることなどの資料をプロジェクターを使いながら説明、「秋田はこれまで原木市場に依存しすぎてきたのが原因。しかし、秋田をはじめ東北地方のスギ素材生産量は増えており、意識改革で状況は変えられる」と、北秋田の林業者らに課題を投げかけました。
遠藤氏は、立木や丸太価格の低迷で林業や山村や危機に瀕しているものの、▽戦後造林した国内の人工林が成熟期を迎え、潜在的には世界最大の木材供給能力を持った国の一つになっている▽これまで国産材の価格低迷の一因であった外材は、資源ナショナリズムや環境問題によって供給量が減少、合板に使われる北洋カラマツもスギの価格より上回っている▽バブル経済の崩壊によって「買い叩きビジネス」は終わり、あらゆる資源が新しい価格体系になってきている、などの事例を挙げ、グローバルな視点での意識改革が必要であることを説いていました。
また、加工ロボットを導入している製材所や、木材の輸送コスト削減のため船舶輸送を目的として湾岸に位置した工場を持つなど国内の先進的な事業所を紹介、新しい国産材時代の創出のためには、意識改革に加えて「技術革新」と「流通整備」によって低コスト生産が必要であることなどを訴えていました。
講演のあと、「地域の林業・木材産業が元気になるためには」と題し、遠藤教授をコーディネーターにパネルディスカッションが行われました。パネラーは、能代市で製材業を営む武田英文氏、大館北秋田森林組合代表理事の大越勝男氏、古河林業阿仁林業署長の福森卓(たかし)氏、北秋田地域振興局森づくり推進課長の阿部雅弘氏の4人。秋田県や北秋田地域が抱える林業・製材業の課題をもとに、会場からの意見を交え低コストによる林業整備などについて活発な議論が繰り広げられました。
(2006.11.24)