2006年09月02日
コンテンツ番号4685
文化会館「寄席演芸公演」
落語の三遊亭金馬師匠などが出演する「寄席演芸公演」が9月2日(土)、市文化会館で開催され、詰め掛けた市民らが落語と曲芸で江戸の寄席文化を堪能しました。
公演は市の自主事業。出演は、平成3年、文化会館(旧たかのす風土館)のこけら落としでも出演していただいた三遊亭金馬(さんゆてい・きんば)ほか、金馬師匠を父に持つ三遊亭金時、大神楽(曲芸)の柳貴家小雪(やなぎや・こゆき)など。
落語界を代表する一人・金馬師匠は、昭和16年、12歳で三代目三遊亭金馬に弟子入り、少年落語家・山遊亭金時としてデビューしました。昭和33年真打昇進、昭和42年に四代目三遊亭金馬を襲名、芸術祭賞など受賞歴も多く、現役落語家では最長の高座歴を誇り、今年で芸歴65周年を迎えます。戦中・戦後の落語界を知る数少ない落語家として知られ、今年5・6月には江戸東京博物館で喜寿(77歳)を記念した企画展も開かれています。また年配の方には、昭和30年代、テレビ草創期に大変な人気を博したバラエティ番組「お笑い三人組」での印象も強いかもしれません。
公演では、出囃子とともに最初に登場した二つ目の三遊亭金翔(きんしょう)が、古典落語の「転失気(てんしき)」を披露。「てんしき」の言葉の意味を知らぬ負け惜しみの強い和尚さんが、小僧に引っ掛けられてしまう話で、会場は一気に江戸話芸の世界に包まれました。
続く金時師匠は、大酒のみの使用人が酒五升を飲み干せるか2人の旦那衆が賭けをする話。扇子を酒一升が入る蒔絵入りの大杯(さかずき)みたてて酒を飲み干す臨場感あふれる仕草に会場は大受けでした。
3人目は大神楽の柳貴家小雪師匠。大神楽とは、獅子舞や曲芸、鳴りものなどを演目とする日本の古典芸能。小雪師匠は3大流派のひとつ・水戸大神楽の宗家に生まれ、特に洗練された古典曲芸「籠鞠(かごまり)」を得意としています。舞台では、「籠」や「鞠」、「傘」などの小道具を使った鮮やかな曲芸を披露。また、途中子供たちに手伝ってもらうなど、会場一体となった伝統芸に大きな拍手を送られていました。
トリを取った落語界の大御所・金馬師匠は、さすがにお客さんを喜ばせる手練に長け、自己紹介や演目の導入部でも軽く笑いの渦に引き込みます。この日の演目は、約五千人を取り上げたという北海道に実在した助産師さんの逸話に基づいた話。お産の現場に脱獄囚が鑿(ノミ)を持って逃げ込み食べ物や金銭を要求するが、気丈な産婆さんは怯(ひる)まず逆にお産を手伝わせ、脱獄囚は役にたてた感動から改心して自主を決意します。「服役を終えたら産婆さんに迎えにきてもらいてえ」と頼む囚人にどうして私かいと問うと、「出所するときは、真人間に生まれ変わるときだから」との落ち。この、笑いと人情にあふれた絶妙の話芸に、落語ファンらも感動していたようすでした。
(2006.9.2)