2007年10月27日
コンテンツ番号9636
鷹巣阿仁青年会議所主催「内陸線再生フォーラム」
(2007.10.27)
厳しい経営が続いている秋田内陸線の再生について語り合うフォーラム「秋田内陸縦貫鉄道の再生で北秋田の活力を取り戻そう!」が10月27日(土)、市産業祭でにぎわう鷹巣体育館で開かれ、鉄道アイドルのトークショーや識者によるパネルディスカッションなどで、同鉄道再生の可能性を探りました。
主催は鷹巣阿仁青年会議所(大森光信理事長)。秋田内陸線は、平成元年の全線開業時の108万人をピークに乗車人員が減少を続け、平成15年度以降は60万人を割り込んでいます。また、平成元年度には1億5千万円だった経常損失も同12年度には3億4千3百万円に増加、再生協議会の「5ヵ年計画」などに基づく経営努力にもかかわらず、18年度には2億6千万を超える損失が発生し、存廃論議が続いています。
同会議所では、内陸線がこのような厳しい状況にありながら、地域活性化のためには不可欠、との考えのもと、数年前から乗車運動や無人駅の駅舎の清掃活動などを実施してきました。今年度は、県内外で署名活動を行うなど内陸線存続に向けた活動を展開、さらに市民とともにこの問題を考える機会を持ちたい、との趣旨から開催されたものです。
フォーラムの第1部は、鉄道ファンからタレントになり「鉄道アイドル」として知られている木村裕子さんの歌とトークショーで開幕。新幹線と内陸線普通列車を乗り継いで会場入りしたという木村さんは、「沿線の景色は最高。窓の外を眺めてばかりでじっと座っていられなかった。2時間の旅が15分ほどに感じた」と、内陸線の魅力と自身のマニアぶりを紹介していました。
また、「内陸線に何が必要?」との会議所メンバーの質問には、津軽鉄道のストーブ列車や写真集も出した和歌山電鉄の「猫」の駅長、名産の「ぬれ煎餅」を売って廃線の危機を乗り越えた千葉のローカル線・銚子電鉄の例などを紹介し、「比立内の紅葉などこの路線には魅力がいっぱい。東京で開かれた鉄道の日イベント(10月14日)には15万人もの鉄道ファンが訪れるが、そのファンを取り込むべき。この路線ならではの魅力をPRし、県外からお客さんを呼んでほしい。廃線なんて考えられない」と、自らアイデアを提案しながら存続運動の盛り上がりに期待していました。
続く第2部では、秋田内陸縦貫鉄道代表取締役専務の竹村寧(やすし)氏、内陸線サポーターの大穂(おおほ)耕一郎氏、JTBパブリッシング常務取締役の安齋二三男(あんさいふみお)氏、空間デザイナーの櫻田勝也氏の4人がパネラーとして参加、大森理事長の司会でパネルディスカッションが始まりました。
自己紹介などの後、会議所メンバーが、▽鉄道施設は自治体が受け持ち、鉄道会社は列車運行に特化する経営の「上下分離方式」▽市民やサポーターも経営に参加できる「第4セクター化」▽全国から寄付を募る「寄付条例制定」など、利用促進のための方策や具体的なツアープランなど内陸線の現状と課題を踏まえた再生策を提言しました。
この提言を受け、パネラーからは▽廃線になりバス運行に転換になると、さらに利用者が減少し、今度はバス路線の存続が危うくなり、最後は地域交通全体や観光に影響が出、「限界集落」が深刻化する。内陸線を守ることは地域を守ることと同じ(大穂氏)▽観光客は増えているが、経営の状況はかなり厳しい。乗車運動にも努めているが、市職員の利用でも定期利用やフレックスタイム導入が進んでいない状況。また、利用者の多い地域と角館・鷹巣地域、また高齢者とマイカー利用者間での運動に対する温度差も大きく、心配している(竹村)▽アイデアはいろいろあるようだが、沿線地域が連携してより大きな取り組みにならないと効果がない。個々のアイデアを橋渡しする組織が必要(櫻田)、といった課題や意見が出されました。
また、厳しい現状はあるものの▽インターネットでの発信、旅行代理店のモニターツアーなどももっと利用すべき。観光客の居住地や年代を分析したマーケティングも大切。テレビや映画作品のロケ地を誘致するフィルムコミッション活動が盛んな地域もある。最近では「エコツアー」も人気。マタギによるアウトドア体験なども関心がもたれるのでは(安齋)▽北秋田市、仙北市をまたいでさまざまな事業に取り組むプロジェクトセンターをつくり、「農村温泉村」や「工房村」など、沿線地域一体で特徴のある拠点づくりを進めては(櫻田)、 といった具体的な提案やアイデアが紹介されました。
ディスカッションの最後で竹村氏からは、「内陸線の存続については損益論だけでは成り立たない。しかし、そのことを理解してもらうためには、熱意を示すための具体的な“数字”が必要。内陸線の各駅には市長名で乗車を促す張り紙が貼ってある。それには、沿線住民の一人一人が年間3回利用してもらえれば目標を達成できることが書いてある。ぜひご協力を」との呼びかけがあり、来場者も拍手で応えていました。