2007年03月26日
コンテンツ番号2802
労作「民間信仰石仏調査報告書」を発行
(2007.3.26)
市教育委員会ではこのほど、旧鷹巣町地内にある民間信仰の対象となった石仏などを調査した「民間信仰石仏調査報告書」を発行しました。
北秋田市では、古くから庚申信仰や太平山信仰、唐松信仰などさまざまな信仰が伝承され、人々が石仏や石塔などを建立し、五穀豊饒や無病息災、日常生活における不安を取り除くためのさまざまな願いを込めて信仰の対象としてきました。
旧鷹巣町では、慶安元年(1648年)に開設された私塾「内館塾」や平安時代の遺跡「胡桃館遺跡」など多くの史跡が残されていますが、一方で路傍の石仏などを対象とした民間信仰に関する調査は、風化や破損により劣化が進んでいることから早期の着手が望まれていたものの、範囲の広さや数の多さから手付かずのままでした。
そこで、鷹巣地方史研究会(岩谷利男会長)の有志が、今の内に地方の民間信仰の実態をまとめ、後世に残そうと平成11年から調査を開始、このたびその調査結果を一冊の本にまとめることになったものです。
調査は当初、石像や石塔、祠堂などの路傍や山野の石仏・石神を対象として、それらに刻まれている名称や願主、奉納者、建立年月日等を記録することから始まりました。その後、各集落の神社にまで範囲が広げられ、祠堂や御堂、神社内に安置された石像や木像の御神体台座や厨子(御室)、さらには棟札や額札、梁木等に記載されている墨書や刻書などもつぶさに調査が行われました。
掲載されている件数は、北側の綴子・岩谷神社から七日市・明利又の「浅利氏墓碑群」までおよそ170件。いずれの物件も所在地が地図上に示され、名称や寸法などの基本データのほか写真が添えられています。また巻末には「庚申塔」「五輪塔」「観世音菩薩」など、民間信仰に表れる用語についての解説が付され、利用者の便宜が図られた労作となっています。
調査を担当した一人で同研究会の佐藤實さんは、巻頭の『調査にあたって』の中で「現在まで地域の人々の手によって大切に守られてきた資料からは人々の信仰心が如何(いか)に厚いものであったかがひしひしと私達の胸に伝わってくる思いである」「数百年の風雪に耐え磨耗しつつある石像の碑文、あるいは破損し又は虫に害され腐食し続けまさに消えつつある墨書・刻書を今のうちに判読・解明し文章に留めおきたい。今回の調査はそのような強い思いから取り組んでものである」と述べ、地域の信仰や伝統について地域の方々が関心を持ち後世に伝えるきっかけになってほしい、と結んでいます。
なお、研究会では調査もれや、資料名・場所等の不明なものについては今後も調査を継続し、明らかにして行きたい、としています。
報告書はA4判133ページ。300部作成。図書館や公民館などに備えられるほか、希望者には一冊1,500円で販売されます。お問合せは市教育委員会生涯学習課(TEL:0186-62-6618)まで。