2007年02月25日
コンテンツ番号2752
賑わいのあるまちなか形成に向けて意見交換
(2007.2.25)

パネラーには、4人の市民が参加しました(左から亀山武次郎さん=市老人クラブ事務局長、山野内キミ子さん=市消費者の会会長、藤島好子さん=主婦、藤島舞さん=鷹巣農林高校2年)。
中心市街地の活性化策について考える「まちの賑わいづくりシンポジウム〜みんなで考えよう!北秋田市の中心市街地活性化」が25日、市交流センターで開かれ、参加した市民らが、まちづくりの専門家による講演や先進地の商業者、市民らによるパネルディスカッションなどを通し、にぎわいのある街中の形成に向けたヒントを探りました。
市の中心市街地の活性化を探る「まちの賑わいづくり事業推進委員会(湊屋啓二座長)」の主催。同委員会は、県の「まちの賑わいづくり事業」のモデル地域選定に伴って、中心市街地であるJR鷹ノ巣駅前通りの活性化を推進し、にぎわいのある街中形成に向けた方策を探ろうと、昨年10月、鷹巣地区の商業者と商工会、市、県などで組織されました。これまで5回の委員会が開かれ、委員からの提言や商店街の実地調査などを基に、活性化に向けた具体策をまとめた“アクションプラン”の素案が策定されています。
シンポジウムは、専門家によるアドバイスや市民からの提言をアクションプランや今後の活動に反映させることをねらいとして開催されたもの。午後1時から始まったシンポジウムには、市内の商工関係者を中心に市民約120人が参加しました。
はじめに、同委員会の湊屋啓二座長が、「既存の中心商店街は、北秋中央病院病院の移転、大型店の進出、後継者難といった大きな課題を抱えている。そのため、推進委員会では5回の委員会を開催し、具体的な活性化策を探ってきた。今日は、そのまとめであるアクションプランを報告し、市民の皆様にも街中の賑わいづくりに関心を持っていただく機会としたい。ぜひ会場からも活発なご意見ご提言を」などとあいさつ。
続いてプログラムに入り、はじめに講師の弘前大学教授・北原啓司氏による「これからの中心市街地〜まち育てのススメ」と題した基調講演が行われました。北原氏は、都市計画やまちづくりの専門家。青森県や弘前市でまちづくりや景観に関わる委員を務められているほか、一市民として住民参加型のまちづくりに取り組まれている方です。

基調講演の講師を務められた弘前大学・北原啓司教授
北原氏はまず、「中心市街地の活性化には、住民がまちづくりを長く続けられる“持続可能性”がキーワードとなる」と説き、そのために必要な都市構造が、環境汚染防止、緑地での新規開発抑制、歴史歴文化財保全などを目的とする「コンパクトシティ」であると説明。
この中で、▽コンパクトとは、都市の形ではなく、街中の魅力を満喫できるような濃いライフスタイルが選択できるということ▽“持続可能”なまちづくりの鍵は「公」と「私」の複合化。たとえば個人の所有地を自治体が賃貸して利用する▽「私」の空間を「公」として位置付ける、といった戦略が有効と述べ、弘前市で行われた奈良美智よしとも展(弘前市出身の現代美術アーティスト)を企業所有のレンガ倉庫を会場として借り上げ、ボランティアによる運営で成功させた事例や黒石市の小見世(店先の私有地部分につくられた木造のアーケード)などの具体的な例をスライドによる説明を加えながらわかりやくす説明しました。
また、弘前市の上土手町での商業近代化事業において、ある商店主は私有地に高層マンションではなく近隣住民が岩木山の眺望に支障にならないような賃貸市営住宅を建設した事例を紹介、「この方は、開発ではなく、周辺住民にも配慮し、かつ賃貸住宅の居住者が店に買い物にきてくれることで、自分がいる“場所”を作った。このように街にいたくなる仕掛けづくりが大切」と、まちはその地域の住民が育てるもの、と説いていました。
この後、推進委員会の湊屋座長がアクションプランの素案を報告。既存商店街の現状と課題を説明した上で、取り組む事業を商業者や商店会が行う「自助」、市民らの援助による「互助」、市が関わる「公助」に区分、▽商店街のクリーンアップ▽シャッターのペイント▽消費者モニター制度の導入▽共同受注・宅配サービスの実施▽地域商品券事業の研究▽空き店舗開放▽情報発信・専用ホームページの立ち上げ▽片側駐車帯の設置事業、などを盛り込んでいることを紹介しました。

パネラーとして参加されたまちづくりの先進地として知られる青森市新町商店街振興組合常務理事の加藤博氏
続いて行われたパネルディスカッションには、青森市新町商店街振興組合乗務理事の加藤博氏、市老人クラブ連合会事務局長の亀山武次郎氏、鷹巣消費者の会の山野内キミ子氏、主婦の藤島好子こうこ氏、鷹巣農林高校2年の藤島舞さんの5人がパネラーとして参加、北原教授をコーディネーターとして討論が行われました。
はじめに加藤氏が、新町商店街での実践事例を紹介しながら、「国が進めてきたまちづくり三法(中心市街地活性化法、改正都市計画法、大店法)は失敗。本気でない自治体が多すぎた。秋田の各市町村もそうだったと思う。まちづくりには30年、40年と長い時間がかかる。伸びたのは売り場面積だけ。坪効率や雇用者数も減っている。しかし、青森市では19年継続してやってきた。あきらめずに取り組んで」と、国の方針などに左右されない持続的な取り組みを呼びかけました。
ディスカッションでは各パネラーが、はじめに推進委員会のアクションプランについて提言、▽高齢者は広い敷地の大型店では迷い、疲れてしまうこともある。地元の商店街が充実していれば、むしろ行きやすい(亀山さん)▽「店内がきれい」「よい音楽が流れている」「トイレがきれい」といった要素があれば、また行きたくなる。そのような店づくりを(山野内さん)、などと意見を述べました。
また、▽鷹巣農林高校では実習で花や野菜を販売しているが、知らない人もいる。空き店舗を利用して販売する方法も考えられないか、との藤島舞さんの提言には、加藤氏が「新町商店街でも青森商業高校の生徒による店舗の例もある。ぜひ実践を」と、アクションプランに入れる事業の一つとして強く押していました。
これからのまちづくりに何が必要か、との問いかけには、▽うまい焼き鳥がどこで売っているのか、といった商店街ならではのきめ細かな情報発信を(亀山さん)▽「手芸店」「男性服の店」「気軽に入れる食堂」などが不足している(山野内さん)▽イベント「餅っこ祭り」では、踊りが終わると見物客はすぐいなくなっていまうが、その後も留まってもらう工夫が必要(藤島好子さん)▽ほとんどの商店が午後7時で閉まってしまう。夜のにぎわいがなく、さびしい。JR利用の高校生は、列車の時間まで居場所がない。『げんきワールド』(駅前・銀座通りにある市の施設)など公共施設がもう少し遅くまで開いていてほしい(藤島舞さん)、などの提言や要望が出されていました。
この後、会場の参加者から北秋中央病院の移転問題や大型店進出などについて意見交換が行われ、賑わいのある街中形成に向けて方策を探りました。