2007年01月12日
コンテンツ番号2731
映画を通じ人生を楽しむ
(2007.1.12)
市中央公民館の定期講座「第8回ハッピーライフ講座」が同館で開かれ、約50人の講座生らが「映画」にまつわる講演会で学習を深めました。
ハッピーライフ講座は、中央公民館の12の定期講座の一つ。さまざまな分野の専門家の講話を聴いて人生を豊かにすることなどを目的に毎月第2金曜日に開催います。
今回のテーマは「映画を楽しむ」。講師は、県内でも有数の映画通として知られ、映画や映画監督・俳優、映画音楽に詳しいだけでなく、映画ポスターやチラシなどの宣材資料の収集家としても知られている大館市立公民館館長補佐の越前貞久(えちぜん さだひさ)さん(55)。
越前さんは、公民館職員として生涯学習に携わるかたわら、歴史の長い映画サークル「絵夢人(えむじん)倶楽部」の代表として映画研究や自主上映会の開催、大館での映画ロケへの協力などの活動をされています。
講演でははじめに、「映画を見始めたのは5歳頃。当時は東映時代劇の全盛時代。勧善懲悪がはっきりし、明朗で豪放らい落なチャンバラの魅力が映画のとりこになった原点」と、自分の幼少時代を振り返り、ときおり当時の映画スターの形態模写を交じえながら「片岡千恵蔵、市川右太衛門、大友柳太郎など顔と声のよい時代劇のスターは最高ですね」との話題に会場の年配者からも共感の声。
「その後、『ベン・ハー』や『アラビアのロレンス』など洋画の大作、ミュージカルなどに興味が移った。映画を見ると、今度は映画音楽のレコードが欲しくなり、少ない小遣いをやりくりしてレコードを買い、また看板に張ってあるポスターの収集にも熱が入った。中学・高校と映画熱は止まらず、映画を見るために東京の大学に入学。学生時代は多い年で年間500本ほどの映画を見た。このまま東京で映画関係の仕事に就きたいと思ったものの、家庭の事情で大館に帰郷。映画サークルを作ったのもこの頃。当時、公民館には青年会やスポーツ団体、サークルなどさまざまな活動が行われていて、交流にもなった」と、地元大館で活動するようになったいきさつを紹介。
続いて、無声映画時代、大館市で活動弁士(=無声映画上映中に、その内容を語りで表現して解説する専門の職業)をされていた鳥潟幸蔵さん(故人)らと活弁を復活させ、老人ホームなどで活弁での無声映画上映活動を10年ほどにわたって行ったことを紹介、「しばらくぶりで活弁に取り組んだ鳥潟さんは、当時すでに70歳ほどだったが、再開できたことで人生に張り合いが出たようだった。80歳ほどで亡くなられたが、最後まで生き生きと弁士をされていた」と、昨日のことのように鳥潟さんとの思い出を語っていました。
この後、平成15年に大館市を舞台にした映画「好きだ、(石川寛監督作品、宮あおい主演)」のロケでは、公道での許可や弁当の手配などで協力した『フィルムコミッション』活動※を通じて市内外に大館の魅力をPRすることができた成果を紹介、その結果、大館での上映会でも、市民から「自分たちの住む大館の空や景色のすばらしさにはじめて気がついた」などの感想が寄せられたことを感慨深く述べていました。
会場には、「ベン・ハー」など洋画の大作や「男はつらいよ」など越前さんが収集した映画ポスターの一部も展示され、来館者も興味深く見入っていました
また、鷹巣出身の俳優・相馬剛三※さんや、秋田県内で撮影された映画の話題などにも触れ、特に昭和58年に鷹巣や合川でロケが行われたものの未完となった作品「みちのく子ども風土記(渡辺喜恵子原作、島田陽州監督)」※については、「東大館駅でロケを行ったときは自分も駅長の役で出演した。北秋田市でも多くの住民がエキストラやスタッフのお手伝いで映画に関わったはずだが、未完となり残念」と、当時を思い出しながら予算や興行上の都合から未完あるいは公開されない作品も多いことを説明していました。
最後に、「映画館は、県内でも秋田市と能代市にあるだけだが、レンタルビデオ(DVD)や衛生放送など、映画を見る機会は広がっている。好きな映画を見ることは人生を楽しむための大きな方法の一つ」と、映画の楽しみ方を紹介、講座生らも越前さんの熱の入った講演を聴き、映画への関心が高まったようでした。
※注
フィルムコミッション
映画、テレビドラマ、CMなどのあらゆるジャンルのロケーション撮影を誘致し、実際のロケをスムーズに進めるための非営利公的機関、組織。
相馬剛三
東映(、東映俳優センター所属の俳優。鷹巣出身。昭和5年2月10日生まれ。県立鷹巣農林学校(現鷹巣農林高校)卒業後、秋田県庁農地部開拓課を経て日本映画学校脚本科卒。昭和26年、映画「どっこい生きている(新星映画)」でデビュー。出演した主な映画に「風来坊探偵 赤い谷の惨劇(1961年:深作欣二監督、千葉真一主演)」「網走番外地 望郷編(1965年:石井輝男監督、高倉健主演)」「新幹線大爆破」「人間の証明」など。TV作品に「泣いてたまるか」「悪魔くん 」「キャプテンウルトラ」「ジャイアントロボ」など。舞台では「長い墓標の列」「イルクーツク物語」など。 特撮監督として名高い円谷英二の作品にも多数出演、最近では「「ウルトラマンダイナ(MBS、平成10年)」で酒屋の主人として、また「ウルトラセブン 太陽の背信(VAP、同年)」では原子物理学の教授役として出演している。平成5年には、43年間の俳優生活が評価され、「映画の日」永年勤続功労章を受賞した。当時の実家は現在の鷹巣町農協付近にあった「相馬書店」。
「みちのく子ども風土記」
鷹巣出身の直木賞作家・渡辺喜恵子さんの幼少期の鷹巣(大正末期〜昭和初期)を舞台にした小説。この小説を原作として同名の映画作品として昭和59年10月に撮影が始まったが、予算上の都合から全編の3分の1ほどを撮り終えたところで撮影が中止され(同61年)、未完となった。旧鷹巣南中学校(七日市根木屋敷にあった校舎)、小森神社、元町の相馬邸裏、合川の美栄や李岱、東大館駅などでロケが行われ、多くの住民がエキストラとして参加した。主役の竹子先生役に桜田淳子、鷹巣小学校の校長先生役に能代出身の大坂志郎(母の志保さんは小森出身。姉は陶芸家の神成澪さん)、名優・辰巳柳太郎などが出演していた。なお、越前さんは渡辺喜恵子さんの生家・栗生沢家とは遠縁にあたる。