2008年12月17日
コンテンツ番号2688
死別体験者への理解を
(2008.12.17)
市保健センターが主催する「心の健康づくり講座」が12月17日(水)、同センターで開かれ、約80人の参加者が、自殺予防をテーマとした講話に耳を傾けました。
秋田県の平成19年中の秋田県の自殺者数は、前年に比べ63人減少し、全国で最も減少率が高かったものの、総数は419人と13年連続で全国トップを維持しているのが現状。そのため、秋田県や市町村をはじめ関係機関などでは、産学官の連携で自殺防止対策に取り組んでおり、この講座も地域ぐるみで自殺予防への理解を高めることを目的として先月に続き開催されたものです。
この日は、北秋田地域振興局自殺予防ネットワーク会議委員で精神保健福祉ボランティア「れもんの会」代表の小坂和子さんと、秋田市で遺族の心のケアなどに取り組んでいる秋田グリーフケア研究会代表の涌井真弓さんが、講話でそれぞれの活動内容を紹介し地域での対応策などについて理解を求めました。
このうち、涌井さんは、「死別の悲しみに向き合う〜自死遺族ケアから」と題し、大切な家族を亡くした遺族の苦しみや悩みをはじめ活動内容などを紹介しました。
涌井さんは、1989年から2005年まで「秋田・生と死を考える会」の代表として病院ボランティア活動などに取り組まれたほか、これまで自死遺族ケア団体全国ネット会員、日本臨床死生学会会員、秋田市自殺予防ネットワーク会議委員などを歴任、死別体験者の心のケアなどに尽力されています。
涌井さんが所属する秋田グリーフケア(悲しみのケア)研究会は、「大切な人を失った人たちが自分の思いを語り、悲しみを分かち合うことで再出発を探る場」として昨年3月発足したボランティア組織。月1回の“集い”には、これまで多くの遺族が参加しているといいます。
講話の中で涌井さんは、大切な人の死を受け入れて新しい生き方を見いだすためのグリーフ・ワークの活動内容などを紹介した上で、「夫や子供など大切な人を失うと、残された家族は大きな苦しみや悲しみを抱える。生きる意欲を失い、後追い自殺を考える人もいる」と話し、身体、精神、社会的な影響を説明。
さらに、「いったん深い悲しみと苦しみに陥ると、どのように声をかけても立ち上がることができず、適切なケアを受けられないままなんとか生活している状態になる。その人たちの心の状態を知らずに元気づけようと言葉をかけて傷つけてしまうこともある」と指摘。
また、喪失の悲しみや苦しみ、悩みを抱えた人たちに向き合うためには、「やさしさを持って話を聞いてあげる、という“ゆるやかな自殺予防”が最も効果的」と説き、「このことは必ずしも専門機関やボランティアだけでなく、家庭や地域でもできる活動」と、地域での理解が大切であることを述べていました。
また、レモンの会代表の小坂さんは、北秋田市と上小阿仁村での自殺予防該当キャンペーンを実施した際の人々の反応を例に上げ、「理解を示してくれる人もいるが、“自殺は個人の問題”と活動に批判的な人もいる。対応することで自殺を防げることがまだまだ理解されていないようだ。私たちの会も小さな組織だが、ボランティアだからできることもあるし、ボランティアでなければできないこともある。これからも県や市とも連携し、理解の輪を広げたい」と活動に意欲を示していました。