2008年11月17日
コンテンツ番号2636
コミュニケーションで自殺予防を
(2008.11.17)
市保健センターが主催する「心の健康づくり講座」が11月17日(月)、阿仁ふるさと文化センターで開かれ、約80人の参加者が、自殺予防をテーマとした講話とレクリエーションを通したコミュニケーション作りなどで研さんを深めました。
はじめに、市保健センターの吉田所長が、「自殺白書によると、平成19年の自殺者数は全国で33,093人と前年度に比べ938人も増加し過去2番目となっている。これは、北秋田市一市に近い数の国民が自殺しているということで、交通事故による死亡者数よりも多い。しかし、交通事故は事故防止について全国的にも運動が展開されているが、自殺対策は不十分。市民が協力し合って予防できるよう努めたい」などとあいさつ。
この後、北秋田地域振興局自殺予防ネットワーク会議の委員も務めている北秋田警察署の田口正彦生活安全係長が「北秋田管内の自殺の現状と課題」と題して講演しました。
田口係長ははじめに、秋田県の統計を引用し、▽平成19年中の秋田県の自殺者数は417人と、前年度比で76人(17.4%)減少しているものの依然として死亡率は全国で最も高い▽年代別では50歳代が98人(23.5%)で最も多く、次いで60歳代の66人(15.9%)、70歳 代の65人(15.5%)の順になっている▽65歳以上の高齢者は145人で、全体の34.88%を占めている▽男女別では、男性が309人に対し、女性が108人と男性が女性の3倍近い人数であることなどを紹介しました。
また、原因・動機別では、健康問題が154人で全体の33.2%を占め最も多く、次いで経済・生活問題92人(19.8%)、家庭問題40人(8.6%)の順になっているそうです。
一方北秋田管内では、「平成19年中の自殺者数は16人で、自殺者の平均年齢は57.3歳だが、70歳代が4人、80歳代が3人と高齢者が多い。また男性が女性の約4倍。また自殺場所は自宅が最も多い」、と実態を紹介。なお、平成20年10月末では12人となっているそうです。
「自殺の原因については県全体の自殺者数のうち33.2%、管内では43%が健康上の問題となっている。うつ病などはなかったとされているが、病院にかかっていないだけでうつの傾向はあったと思われる」と述べ、うつ病が自殺の大きな要因であることを指摘。
「少し哲学的になるが、最も効率よく働くための要素は『生きがい』である、とのある経済学者の研究成果がある。言い換えれば生きがいがないと働けない、生きていけない、ということ。生きがいとは何か。人のために生きていることを実感することだろう」と持論を展開しました。
その上で、「同居家族が自殺したとき、その原因に思い当たらないときがある。しかし、自殺者の多くは、家族から邪魔にされたり、必要とされていない、と疎外感を感じたことで生きがいを持てなくなったことが自殺の原因になっているケースも多い」と、自殺者の心理について触れていました。
また、捜査に関わった実例から、離れて暮らしている家族がお正月の数日を一人暮らしの親の実家で過ごし、家族が帰った直後に自殺した高齢者のケース、デイサービスを電話で頼み、迎えのバスが到着する直前に衝動的に自殺した高齢者のケースなどを紹介し、「周囲から見てすぐには気がつかないケースだった。しかし、特に高齢者に対しては周囲の人が気遣い声をかけてあげることで、自殺を防げたのでは」、と振り返っていました。
最後に、「愛の反対語は『無視』。かつて警察学校で教えたこともあるが、声をかけ、ほめることで成績も伸びる。高齢者などに対する声がけも自殺を予防する大きな手段」と、家族や地域住民による声がけの大切さを説いていました。
続いて、「コミュニケーションでつなぐ地域の輪」をテーマに、レクリエーションを取り入れたコミュニケーションづくりの講話と実技が行われました。講師は秋田県レクリエーション協会の草薙孝悦常任理事。
レクリエーションは、遊びやゲーム、軽スポーツをベースとした活動を複数の参加者で行うことにより、対人関係のコミュニケーション力や心身の機能を高める手段として非常に効果的といわれており、多くの企業や学校、福祉の現場などで導入されています。
草薙講師は、はじめに「誕生日の順に、輪になって並んで」と指示。参加者は、互いに誕生日を聞き合いながら順番に並ぶと、次に、講師の指導でまだ面識のない隣同士で言葉を交わし合ったり、肩をたたき合うなど言葉と動作でコミュニケーションを図りました。参加者は最初は少しとまどっていたものの、すぐに会場全体に歓声が響き、和やかなムードに包まれていました。
草薙講師は実技を通し、「『どさ、湯さ』などの会話に見られるように、秋田県人は会話を少ないことばで済ませる傾向があるが、家庭や地域の中で声を掛け合うことで、コミュニケーションの輪が広まる」と、声がけやあいさつの効用を述べていました。
高齢者の自殺をなくそう!「鷹巣阿仁地域自殺予防の集い」
11月26日(水)、市保健センターを会場に「鷹巣阿仁地域自殺予防の集い」が開催されます。時間は午後1時30分から4時まで。講師は秋田大学医学部保健学科の湯浅孝男教授。「高齢者の自殺を防ぐために〜心の健康づくり」と題し、講演いただく予定です。
また、市民による活動発表があります。主催は北秋田地域振興局鷹巣阿仁福祉環境部及び鷹巣阿仁地域自殺予防ネットワーク会議。お問い合わせは、鷹巣阿仁福祉環境部(TEL:0186-62-1165)まで。
開催要項
申込書