2008年10月13日
コンテンツ番号2587
地域づくりをテーマに意見交換
(2008.10.13)
第59回全国植樹祭開催記念「水と緑の森林祭」(会期:10〜13日)の最終日となった 13日、北欧の杜公園お野立所前のメイン会場では、秋田のローカルヒーロー「超神ジオンシ ョー」や秋田でロケを行った映画「釣りキチ三平」スペシャルトークなどが行われ、家族連れなど大勢の見物客で賑わいました。
また、パークセンター内の会場では、景観や地域づくりについて考える「水と緑の景観フォーラム」が開かれました。プログラムのうち、午後から開かれたまちづくりについての講演と パネルディスカッションには、市民ら約50人が参加し、地域づくり、人づくりについて理解を深めました。
はじめに、秋田県立大学生物資源学科教授で、農村社会や地域づくりについて研究されている荒樋豊(あらひ ゆたか)氏が、「水と緑の景観まちづくり」と題して講演を行いました。
荒樋氏ははじめに、平成50年には8.9%で全国25位だった秋田県の高齢化率が2004年には26.1%(2位)と高くなり、2025年には35.4%と全国一になることが予想されていることや、地域経済が衰退し、農産物価格が低迷していることなど農村地域の抱え る問題状況を説明しながら、「農村が元気になるためには、たとえば米作りにおいても、単に作るだけでなく他面的な価値を持たせることが必要」と訴えます。
その一例として、「農家では、出荷用以外に『はさがけ※』をした米を家族用に作っているこ とがあるが、極端に言えばそれは『エサ』と『食糧』の違い。はさがけしたおいしい米を都市部の人たちにも提供することで、農村に目を向けさせることも一つの方法」と説きます。(※刈り取った稲を、「はさ(稲架)」と呼ばれる干しざおにかけ天日にさらす伝統的な自然乾燥法)
その上で、北秋田市の阿仁・根子集落で取り組んだ地域づくりの実例を紹介しました。マタギ発祥の地としても知られている根子集落は、国道105号線と根子トンネルで結ばれ、トンネルを抜けると周りを山に囲まれた集落が現れる日本の原風景としての景観が魅力です。
塾では、高齢化が進み耕作放棄地や廃屋が増えつつある現状などを洗い出すとともに、根子番楽や観音講などの民俗文化、水芭蕉やカタクリの群生地といった魅力を集約し、マップを作成します。こうして、▽老人クラブでは清掃活動で集落の美化を図る▽番楽を集落以外の人に も楽しんでもらう▽水芭蕉の美しさを知らせよう、といったテーマを設け、訪問者に根子フ ァンになってもらおう、という取り組みを始めることになり、平成20年度の行動計画が作成されました。
「秋田では、まちづくりに関しても行政のお世話になっていることが多いが、依存していては人は育たない。国の補助金行政も最近ではかなり変わってきており、『企画し、やり遂げる力』が問われている。根子での活動も魅力的な農村社会をPRする取り組みの一つ」と、説いていました。
講演の後行われたパネルディスカッションでは、NPO法人冒険の鍵クーン理事長の村田君子さん、ラブリバーネット北秋田代表の湊屋啓二さん、大館まちづくり協議会会長の斉藤留美子さんがパネラーとして参加、荒樋教授をコーディネータに「まちづくり、人づくり、夢づく り」をテーマに意見交換が行われました。
子どもたちを中心に、市民、訪れる人たちに地域の自然に親しむ機会を作っている冒険の鍵クーンの村田さんは、「子どもたちに活動に参加してもらおうと思っても、最近では子どもも 親も忙しく、参加者が少ないのが現状。しかし、続けることで少しづつ活動が広まり、子ども たちをはじめ人との交流も広がる。また、そこで楽しんでいる自分がいる」と、活動を継続することの大切さを紹介していました。
河川を活用した地域づくりなどに取り組んでいる湊屋さんは、「きれいな水に棲むサクラマスが当地の河川にはたくさんいるが、むしろ地元の人に知られていない。また、子どものうちから河川や魚に触れる体験が、地域の良さを知ることにつながる」と、ふるさとの魅力を知ることが地域づくりの原点であることを訴えていました。
また、大館市という広い地域でのまちづくりに取り組んでいる斉藤さんは、「会員は個人・ 法人合わせて300人・団体という大所帯だが、実際の活動に参加する会員は顔ぶれが決まっ ている。また市からの補助金も削減された。そのため、活動が重荷になり一時は解散の声も出 た。しかし、子どもたちのために負の遺産としての大館を残してはいけないと議論を重ね、今の自分たちでできることに限定し活動を継続しようと意識を変えた」などと、身の丈の活動で住民を交え、自分たちも楽しむことが継続と夢の実現につながると、述べていました。
最後にコーディネーターの荒樋氏は、「北海道の石狩地方では、秋の収穫が終わると冬は夫婦で映画を見に行っていた。一方、帯広では冬も作物を育て、一年中汗を流し農業をしていた。年収も5倍は違うかもしれない。しかし、本当に楽しい暮らしはどちらか」と問いかけ、地域づくりには生活の価値観を問う視点も必要であることを述べていました。
フォーラムに出席した根子集落の佐藤正俊会長は、「夢を持って元気に活動することが、集落が『いいところだね』と評価されることにつながる。現状は厳しいが、限界集落といわれぬよう取り組みたい」と話していました。