2008年10月15日
コンテンツ番号2585
既存の資源を活かした仕掛けが必要
(2008.10.15)
森吉山通年観光対策協議会(会長=岸部陞北秋田市長)の自主事業「森吉山を利用した地域づくり講演会」が、10月15日、四季美館で開かれ、参加した市民、関係者が観光について研究されている専門家の講演に耳を傾けました。
講師は、(株)JTB常務取締役の清水愼一氏。東京大学卒業後、JR東日本、東日本キヨスクを経て同社の常務取締役に就任。現在は立教大学観光学部特任教授として教べんをとる傍ら、内閣府「地域活性化伝道師」など各種機関の要職も兼務され様々な観光事業などを指導されています。
講演で清水氏は、プロジェクターを使って様々なデータや画像を示しながら縦横に観光のあり方を説きました。
まず秋田県の観光について「旧来型の観光から抜け切れておらず、季節ごとの観光スポットも限られて豊富な資源を活かしていない。観光客の入り込み数より宿泊客が大事」と指摘。
京都の町屋や祖谷の廃屋などを宿泊施設にして海外からの観光客に利用されている事例も紹介し、「現在の観光客の嗜好として観光客は施設やイベント、温泉ではなくその土地にしかないような食や歴史、文化、生活者としてのふれあいを求めている。旅行のしかたも団体旅行ではなく個人や家族、グループが主で、まちを歩いて見る観光になっている」と特徴を説明。
地方鉄道についても、「鉄道がなくなれば地域は急激に衰退する」として五能線や津軽鉄道の成功事例などを挙げながら、「内陸線も観光の重要な柱。観光客が楽しむ工夫が必要。各駅からの散策コースをいろいろ設定してまちの魅力を活かす工夫も必要。地元の食材を使った食の情報発信が特に重要」と述べました。
さらに、新潟県の村上市や大分県の豊後高田市の誘客の取り組みと実績を紹介しながら、「余計な投資よりも既存の資源を活かして誘客する仕掛けが大事。観光客をみんなでもてなす町ぐるみの観光の研究が必要」などと地元住民の取り組みを喚起しました。
また、「小坂、大館、北秋田、仙北、雫石を結ぶ広域観光圏を設定し、国の支援を受けながら特徴ある観光圏を形成して新たな観光客に対応していくべき」と主張。最後に、食の情報発信、広域観光圏の形成、内陸線の必要性を重ねて強調し「観光客との交流が多くなればまちも元気になる」と締めくくりました。
講演のあと参加者からは「内陸線沿線はスイスの風景などに似ているといわれるがどのようにPRしたらよいか」などと質問があり、清水氏は「森吉山のすばらしさはいうまでもないがきれいだけではだめ。観光客の関心を引く仕掛けが必要。イメージをつくりあげるキャッチフレーズの工夫を」と答えていました。