2008年08月20日
コンテンツ番号2436
「存続には大きなエネルギーと負担が必要なことを理解して」
(2008.8.20)
乗車人員の減少に伴う慢性的な赤字で路線の存廃が大きな課題になっている秋田内陸線をテーマにした寺田典城秋田県知事と北秋田市議会議員の意見交換会が8月20日(水)、北秋田市中央公民館で開かれ、知事と市議会議員が、同路線の乗車促進策などについて議論し、存続の可能性を探りました。
秋田内陸線は、平成元年の開業当初107万8千人の乗車人員がありましたが、人口減少や車社会の進展により平成19年度は開業当初の半分以下の44万3千人まで落ち込み、廃止か存続かの議論が続けられています。
市議会では、昨年の6月定例議会で秋田内陸縦貫鉄道存続特別委員会(原田醇一委員長)を設置し、現状把握、乗車促進への取り組みを行うともに、6月定例議会本会議では同鉄道存続に関する決議を全会一致で議決し、これにもとづき6月20日には県知事や県議会に対し存続を求める要望書を提出しています。
一方で寺田県知事は、「存廃について9月までには結論を出したい」としていることから、県知事の考えについて認識を深め、市議会としての取り組みにつなげることなどを目的として開催したものです。
意見交換会には、市議会議員と県知事ほか、岸部市長、藤田了次地域振興局長、県建設交通部交通政策課長、秋田内陸縦貫鉄道株式会社の竹村寧専務、津谷永光県議会議員、市の関係者など約60人が出席。
寺田知事
はじめに主催者を代表し吉岡市議会議長が、「知事には、6月の要望書を受け取ってもらい感謝申し上げたい。今日は活発で中身の濃い意見交換会であることを願う」とあいさつ。
また、寺田県知事は、「高齢化、人口減少が進む中で、利用者もピーク時の100万人から40万人台と減ってきているのは事実。赤字もピーク時の3億3千万円から昨年2億5千万円に減ったとはいうものの、大きな金額。内陸線沿線には交通弱者が多く、公益のためにも残したいが、赤字や利用者減という現実をどうやってクリアするかが問題。内陸線は北秋田市や仙北市だけの問題ではなく県全体として取り組むべき課題。しかし、相当のエネルギーを注ぎ、将来にわたり力を出し切らない限り存続は難しい。今日は、将来のことを含めて話し合いたい」と、述べました。
意見交換に先立ち、市の担当者が、今年度に入ってからの沿線自治体での主な取り組みや内陸線の経営状況を説明しました。
この中で、北秋田市及び仙北市の職員の通勤定期利用により、5月と6月は前年比でほぼ倍増したことなどを述べるとともに、県や市、会社などで構成する秋田内陸鉄道研究会がまとめた「内陸線存続に向けたポイント」として、▽内陸線の存続には膨大なエネルギーが必要(県、市、議会、住民等がその覚悟を共有できるか)▽経常損失の最終目標は1.5億以内だが、当面3年後を目標に、利用者60万人以上、損失2億円以内を目指す(そのためには恒常的な乗車運動による利活用促進が不可欠)、といった5つの項目を紹介しました。
意見交換では、市議会側から「存続運動の継続は必要だが、将来にわたり長く続けるといずれ息切れしてしまう。発想の転換が必要。たとえば、大野台工業団地、北欧の杜公園、市民病院などにつながる支線を引き、恒常的な利用者を増やすことはできないか」「公共機関を一カ所に集中させることが利用増につながる。地域振興局を市民病院などが立地する予定の大野台に持ってこられないか」といった意見や提案が出されました。
これに対し寺田知事は、「『お願い』だけでは現実味がない。存続には現在の40万人を60万人に増やさないと2億円の赤字はなくならない。60万人は大きな数字。そのことを住民全員が認識し、赤字解消につなげるシステムが必要」「発想の転換も必要。現在はまだ手を付けていないが、地元住民だけの利用でなく、県と市町村が連携して各市町村の県人会にお願いしてみるのも一つの方法」「振興局を移転することは考えていないが、人口減少社会に対応するため施設を集中させることは都市計画の考え方の一つ」などと回答。
また、「内陸線の枕木は全線で1万8千本あまり。これを1本1万円で購入してもらい基金を作っては」「内陸線の無人駅の駅長を全国から募集しては」、といったアイデアも出され、寺田知事も「乗車促進に真剣に取り組むといろんな夢、発想が出てくる。それを具体化できるようにしてほしい」と歓迎していました。
一方で、「阿仁から鷹巣に引っ越す人がいるなど高齢化や相次ぐバス路線の廃止などで生まれ育った地域で暮らすことが難しくなってきている実態がある。内陸線を背骨にして、枝の部分を整備しないと住み続けられないようだ」と、限界集落につながるような過疎・高齢化による深刻な集落の実態について県の考えを問う質問もありました。
寺田知事は、「人口減少、高齢化によって農業にも影響が出ている。定期路線バスも、今後どの地区を残していくか、交通体系として市でどう計画するかが課題。当然その中に内陸線が組み込まれる」、との考えを述べ、赤字解消には、「単純にいえば、2万人の市民が1人1万円の定期を購入すれば解消する。今は100円稼ぐのに250円かかっている状況」と、状況の打開には市民全員の理解と思い切った取り組みが必要であることに理解を求めました。
最後に知事は、「私も何度も内陸線に乗り、通勤者、通学生の生の声を聞いている。阿仁スキー場も北秋田市だけの問題とは捉えておらず、今後も、観光面でも力を入れていく。しかし、現状の利用者40万人では維持できない。議員の皆さんには、自分の選挙運動以上に内陸線存続に向けて力を入れてほしい。また、市でも相応の財政負担が発生することを覚悟して」と、より強い取り組みと理解を求めていました。
岸部市長は、「存続のためには大きなエネルギーが必要。『存続』の方向性が打ち出された場合でも安心して気が緩んでしまうことが心配。今日は、さまざまな意見・アイデアが出されたが、それを恒常的に乗車促進と赤字解消ににつなげられるよう市としてもがんばりたい」と、存続への意欲を示しました。