2008年07月03日
コンテンツ番号2363
石を運搬した道路跡? 今年度の調査概要を説明
(2008.7.3)
平成20年度第1回伊勢堂岱遺跡調査検討委員会(委員長・小林達雄國學院大学教授)が7月3日(木)から始まり、第1日目の3日は、委員による現地視察などが行われました。
伊勢堂岱遺跡は、秋田内陸線小ヶ田駅付近の台地に位置する、縄文時代後期前半(今から約4000年前)の遺跡。平成7年に大館能代空港のアクセス道路建設に先立つ発掘調査で発見され、環状列石や配石遺構、掘立柱建物跡、土坑墓、捨て場など、多くのマツリ・祈りの施設が見つかり、大規模な祭祀場の跡ではないかと考えられています。
遺存状態がよく学術的価値が高いことから、平成13年1月、国の史跡に指定されました。また、小牧野遺跡(青森)、大湯ストーンサークル(鹿角市)など北東北及び北海道の環状列石のある遺跡と合同で世界遺産暫定リスト登録を目指し、昨年申請を行っています。 委員会は、小林委員長を含め考古学、保存科学、植物学、民俗学などの専門家8人で構成され、伊勢堂岱遺跡の調査や史跡整備について指導と助言を行います。
この日の現地視察では、熊谷常正委員(盛岡大学教授)、冨樫泰時委員(元県立博物館長)など3人の委員ほか、同遺跡のボランティア「ワーキンググループ」のメンバーも参加。はじめに、第2次調査で発見された直径32mの環状列石Aの北側調査区に集合し、市の担当者が調査の概要を説明しました。
ここでは、4千年前の地層まで掘り下げたところ、環状列石Aから続く張り出し部分を確認したほか、帯状に伸びる2条の硬化面が見つかりました。▽硬化面は周囲の土よりも明らかに硬く、性質が異なる▽帯は約2m間隔に平行に走り、対になるものと考えられる▽環状列石Aに向かって真っ直ぐ伸びている、ことを説明すると委員の1人は、「道や階段の可能性もありますね。続く部分もあるのでは」と遺構から北側に下がる斜面に足を伸ばし周囲を見回していました。
同遺跡の環状列石に使われている石は、小猿部川などから運んできたとされるものの、どのような運搬方法で遺跡のある台地に運んだかなどかは謎とされていることから、この道のような帯が謎を解く手がかりになるのではないかと期待されています。
この後委員は、2日からレーダー探査を行っている鷹巣中学校野球場の胡桃館遺跡に移動し、調査を担当しているの独立行政法人奈良文化財研究所の調査員から探査の結果などについて説明を受けました。調査は昭和30年代から40年代にかけての調査で遺物が出土した範囲の隣接地でさらに遺物がないか詳細分布調査を行うもので、4日間、電磁波と電気による地中探査が実施されます。
担当者は、「調査途中なので分析する必要がありますが」と前置きしながらも、パソコンで探査結果の画像データを示しながら、当時の発掘跡の南側にあたる野球場グラウンドの外野部分の地中に、3m×10mほどの大きな四角い形や太い帯状の形の反応があったことを説明しました。
発見当時、胡桃館遺跡の調査に携わった冨樫委員は、「ここは十和田火山の噴火によるシラスで埋もれているため、胡桃館遺跡以後の建物跡とは考えられない」と、その反応痕が当時の建物の遺物で、地中に埋まっている可能性に期待していました。
検討委員会は明日4日10時から市中央公民館で第15次調査や今後の環境整備について協議が行われます。