2008年03月05日
コンテンツ番号2493
「あきたバイオ燃料フォーラム」、市交流センターで開催
地球温暖化の防止と地産地消の新しいエネルギーとして注目を集めているバイオ燃料についての理解を深めようと、秋田県が主催する「あきたバイオ燃料フォーラム」が5日、北秋田市交流センターを会場に開かれ、菜の花の栽培とバイオ燃料製造に関する講演などを通して、新たな視点でのエネルギー生成と地域活性化方策を探りました。
バイオ燃料とは、生物体(バイオマス)が持つエネルギーを利用したアルコール燃料や合成ガスなどのことを言います。精製されるバイオエタノールにガソリンを混ぜた「バイオ燃料」は、二酸化炭素の排出量がガソリンなどよりも大幅に少ないことから、世界的に地球温暖化対策として注目されています。原料となる主な植物としてトウモロコシ、小麦、サトウキビ及び木材などがありますが、原料の確保や高い生産コスト、燃料の用途限定などの課題があって、新たなエネルギーの開発として捉えた場合、まだまだ発展途上の段階にあると言えます。
日本国内においても、自動車メーカーをはじめとして原材料の生産団体などの機関による 研究開発等の動きが活発化され、環境保全へ向けたエネルギー意識が高まってきています。これは同時に、原料となる植物を栽培・生産することによる新しい農工業生産に繋がる効果などが期待されることとなりますが、秋田県でもこのたび、バイオ燃料を生み出す過程で展開される農地の再生や地域の産業活性化にスポットを当てた研修会として開催したものです。
午後1時から始まったフォーラムには市内外の農林業や行政関係職員らおよそ250人が参加。最初に主催者の秋田県環境あきた創造課「菜の花バイオエネルギーチーム」の佐々木チームリーダーが「環境保全と消エネ対策の研究・開発が世界をあげて取り組まれるようになった。秋田県でも、循環境型社会へのシフトを目ざした取組みを始めているので、今日の研修を機に関心を持っていただきたい」とあいさつ。
このあと「秋田杉からバイオエタノール」と題して日清製粉エコチームマネージャーの長谷川清氏が講演を行いました。長谷川氏は、「世界経済を作り上げてきた消費型社会はもう限界。石油の枯渇、食糧難、地球温暖化の伸展で悲観論が渦巻いている」と、地球規模で人間に必要な各種資源が危うくなっている状況を説明した上で、バイオマス燃料へのシフトの必要性について、秋田杉からバイオエタノールを生み出す可能性を題材について述べました。
この中で長谷川氏は、△日本でのバイオ利用可能量では木質バイオマスが断然トップ△秋田県は杉生産が全国一△生物資源バイオでも食糧作物と競合しない未利用資源―などと、秋田杉の間伐材等を利用するメリットを示しました。
その一方で、バイオマスエタノール製造の課題として、△燃料生産プラント(工場)設置のコスト△一連の生産、利用の輸送効率などを挙げて、現在の広範囲な化石燃料の消費、活用サイクルに比較して効率性に乏しい点を指摘。このため、現在の技術水準でバイオエタノールを効率よく消費していくための事業化について、「地域分散型の生産と消費がコスト軽減と環境保全に結びつく。今後、関係機関での研究と開発に力を入れて、ぜひ秋田モデルを作り上げてほしい」と述べ、石油代替エネルギーとして伸び行く可能性を秘めているバイオ資源・秋田杉の育成を強調していました。
次に、県立大学生物資源学部の佐藤了教授が「菜の花から秋田の農業・農村を元気にしよう」と題した講演が行われました。この中で佐藤氏は、2005年に立ち上げた「工農融合・菜の花研究プロジェクト」の「秋田菜の花運動」で実践してきた県内の耕作放棄地への菜の花栽培と菜種油の生産に係る一連の活動を紹介しました。
佐藤氏は、「基本戦略は農業・農地の再生と地域の協働社会の構築」とした上で、 「地方都市や農村で展開できる循環型エネルギーの創出活動。深刻化する資源・環境問題を理解しながら農村経済の再生に向けた住民連帯感の向上に繋がる」と、産学官に住民パワーが連結した活動となっているメリットを力説していました。
講演の3人目として、小坂町産業課参事の近藤肇氏が「菜の花と農地を活かした循環型社会づくり」と題して、町の重点事業として取り組んでいる「小坂町バイオマス構想の実践」を紹介しました。 小坂町のまちづくりのキーワードは「エコタウン・小坂」。かつては鉱山で栄えた町がその技術を最大限に生かして、生活消費資源をリサイクルするシステムづくりを町の基幹産業に位置づけています。
近藤氏は、構想の主題を『農のエネルギーは大地から』としたバイオマスタウンづくりでの、「家庭生ゴミの堆肥化」「遊休農地等を活用した菜の花栽培」などの事業を紹介。町では、町民に対して生ゴミ、食用廃油の回収と、転作田等への菜の花栽培を呼びかけながら、関係するリサイクル施設の整備をすすめながら堆肥や菜種油等の生産、販売を行ってきていることなどについて述べました。
この中で近藤氏は、「模索、試行錯誤のなかでも、町民の理解と協力が大きいので事業の成果が目に見えてくる。バイオマス構想は先の長い戦略ゆえ、『いま出来ることをやる』の姿勢が大切。町の取組みはやがてそのエリアを拡大してくれるものと期待している」と語り、特に、転作田や耕作放棄地への菜の花栽培(40戸の農家で30ヘクタールの作付け)は農地の再生と活用の面で有効に作用している点を強調していました。
なお、会場前のフロアでは搾油機を使った菜種搾りの実演と、小坂町で製造・販売している菜種油「菜々の油」の展示即売コーナーも設けられて、参加した聴講者が菜種油を買い求めるなど多くの関心を集めていました。
(2008.3.5)