2008年03月09日
コンテンツ番号5110
『親業』インストラクターの鈴木さんが講演、「子育て支援セミナー」
子ども・子育て支援推進北秋田地区協議会(湊屋啓二会長)、北秋田地域振興局などが主催する「子育て支援セミナー」が3月9日(日)、市交流センターで開催され、大館市、北秋田市・郡の参加者が、最近注目されている『親業訓練』について、理解を深めました。
同協議会は、一昨年制定された県子ども・子育て支援条例に連動する子育て応援組織。地域全体が連携し子育て環境の整備を進めようと、行政ほか子ども会、子育てサークル、絵本の読み聞かせの会など子育てに関わる15の団体が参加し昨年春に発足、11月には秋田内陸線を利用した「子育て応援列車」などの啓発活動も行っています。
今回のセミナーには、親子連れなど約120人が参加。交流展示ホールで行われた開会セレモニーでは、湊屋会長が、協議会発足の目的や活動内容などを紹介した上で、「最近よく、親子の絆が希薄だと言われており、そのことが原因となって不登校や引きこもり、極端な場合には親子間の悲しい事件も起きてしまう。そうならないためにも親子のあり方を見直し、子育てを学ぶ機会を作ることが必要と考えた。社会の一番小さな単位は家族。今日は、子育てのヒントを探り、学んでほしい」とあいさつ。
この後、スタッフの指導でアンパンマンのタペストリー(壁掛け)を作る「親子で創作活動」が行われ、小さい子どもたちもお父さん、お母さんたちと楽しそうにタペストリーを作っていました。
研修室に移動して行われた保護者向け講演会には、保護者のほか子育てに関心を持つ市民らも参加しました。講師は、秋田初の親業訓練協会認定インストラクターとなった秋田市の鈴木聡子さん。「『親業』〜子どもに愛が伝わるコミュニケーション」と題し、自身の子育ての経験なども交え、子どもとのコミュニケーションの仕方について講演しました。

キャッチボールを子どもとのコミュニケーションに例えて親業訓練について語る講師の鈴木聡子さん
鈴木さんは、1973年宮城県生まれ。仙台市内の幼稚園や保育園に10年間勤務したあと結婚を機に秋田市に移住、NOP法人子育て応援Seed副代表を務めるかたわら、2006年に親業訓練インストラクターの資格を取得、現在親業訓練サークル「ピュアマインドあきた」の代表として県内各地の幼稚園や公民館などで講演活動や講座開催に取り組まれています。
鈴木さんは始めに、親業訓練がアメリカの臨床心理学者、トマス・ゴードン博士によって始められた、親子関係を改善し、温かく健全な家庭を築き、子どものすこやかな成長を実現するためのトレーニングが原型となっていることや、秋田ではまだあまり知られていないが、日本では30年前に始まり、その後全国展開されてきたプログラムであることなどを紹介。
本題に入ると、「親業訓練は、愛情と理解の心のかけ橋作りを目的とする訓練。かけ橋とは、親と子が心のうちに起きている感情を確認すること。皆さんは、どうコミュニケーションをとっていますか」と問いかけながら、▽子どもが悩んでいる時、親は子どもが自分で解決するように手助けする▽親が困った時、自分の気持や考えを素直に伝える▽お互いの欲求が対立しているとき、親と子が納得していくように解決する、と、『聴く』『話す』『対立を解く』ことが3つの柱となることを説明します。
このうち、『聞く』ことについて、わかりやすいように兄弟げんかの例を挙げ、妹が大切にしていたアメを姉に取られて、お母さんに不満を訴えているケースを事例として話を続けます。
「子どもがうるさく泣きついて来る。普通は『泣くのはやめなさい』『兄弟げんかはやめなさい』『大事なものならしまっとけばいいのに』と言ってしまうが、これでは子どもは反発したくなり、悲しくもなり、心を閉ざしてしまう。大切なのは、子どもが安心して心のうちを話せ、自分で考える力をつけるように能動的に聞いてあげること。▽『アメ取られちゃったんだ』などと、共感しながら子どもの言葉を繰り返してあげる▽『アメのことでけんかしたんだ』などと言い換える▽『くやしかったねー』などと気持を汲んであげる、といったふうに、子どもの言い分に対して親が鏡になることでまるく収まるケースも多い」と説きます。
会場では、鈴木さんの指導で参加者2人がペアになり、このケースでの親子になって会話をするロールプレイングを実践。参加者は、とまどいながらも隣の人と良い会話の方法を探っていました。
またこの点について鈴木さんは、一方的で続かないコミュニケーションの例として、「やめなさい」とする『命令』、「〜しないと○○買ってあげないよ」とする『脅迫』、「だめな子ね」などと決め付ける『非難』など12の型を列挙し、「子どもが何か悩んだり、いやな気持になったときはこの方法では効果がない。いずれも親の意見であり聞くことになっておらず、コミュニケーションのかけ橋を崩してしまうこと」と指摘していました。
また、『話す』ことについては、感情のおもむくまま叱ったりしないで、親の気持ちを率直に伝えることが大切、と述べ、子どもの気持ちに配慮しつつ子どもの言動に対して自分が、いまなにを感じているかを打ち明ける表現方法である「わたしメッセージ」を提案していました。
これは、「だから、あなたは…」というふうに、子どもをせめたててしまう言い方「あなたメッセージ」に対する表現方法。例えば、子どもが遅く帰宅したとき、「どうして、(あなたは)門限を守れないの!」 と言ってしまうのが「あなたメッセージ」。これに対し、「帰りが遅いから、心配してたのよ」と子どもの気持に配慮した言い方をすることで、子どもが反抗心を起こさず、親の意見を聞いてくれるようになるコツ、と述べていました。
鈴木さんは最後に、「私自身も子育てに悩んだことが親業訓練に関心を持つきっかけとなった。子どものサインを察知することは難しく、常にアンテナを磨いておかなければと思う。小さなことであっても子どもが話してくれるような親でありたい。そのことを一人でも多くの人に伝えれれば」と、締めくくりました。
(2008.3.9)