2008年03月17日
コンテンツ番号5568
ホテルニューオータニ和食料理長・井川比呂志さんを招きセミナー開催
平成19年度大館・北秋田地域スローツーリズムセミナーが、3月17日(月)、市内のホテルで開かれ、料理店経営者、肉や野菜の生産者など地域の「食」に携わる市民らが、プロの料理人による地域の食材を使った調理講習会や、座談会などで、観光素材としての「食」のあり方を探りました。
セミナーは、滞在型・体験型観光を推進している北秋田地域振興局が、誘客手段として重要な「食」の部分に着目し、大館・北秋田地域の郷土食材の魅力を和食料理人の調理技術を学ぶことで地元の食材を再認識し、商品開発や地域振興につなげようと開催したものです。
講師は、ホテルニューオータニ幕張で和食料理長を務める井川比呂志さん(44)。1990年、同ホテル内にある会席料理の店「紀尾井町倶楽部」で当時の和食総料理長・加藤達雄氏に師事、96年に同倶楽部の料理長に就任後、2003年には36歳の若さでホテルニューオータニ和食総料理長に就任されています。
今回の来市は、市内の料理店に勤める柏木昌晃さん(33)が、東京での修業中師事した井川さんに、JA鷹巣町が生産する山の芋を紹介したところ、昨年夏、同ホテルの和食レストランで採用されることが決まり、このことをきっかけとして、山の芋のほか比内地鶏やイワナなど北秋田の食材に関心を示していただいた井川さんに地域振興局が依頼し、実現したものです。
セミナーは、井川さんの調理実演と、市民が井川さんと郷土料理の魅力などを語り合う座談会の2部構成で行われ、JA、商工会、北秋田森林組合の関係者、野菜生産農家、料理店・仕出し店の経営者など約100人が参加しました。
はじめに、武藤冨士雄・北秋田地域振興局長が、「井川さんにおいでいただけるのは夢のよう。今日は、実際に調理の実演と試食、座談会などでの先生のアドバイスを通し、地域づくりのためのステップアップとしていただければ幸い」などとあいさつした後、第1部が始まりました。
井川さんは、『和食のイロハ』と題し、「比内地鶏の山の芋蒸し山菜添え」「山の芋とベイナスの揚げ出し」の2品を調理、下ごしらえから味付け、盛り付けなど各段階でわかりやすく説明を加えながら、郷土料理を生かす心意気と調理技術を伝えました。
「野菜は熱湯に通し、水分を少し出して味をしみ込みやすくする」「比内地鶏は皮もおいしいので、表面をぱりっとなるまで焼く」「煮物などは、一度冷ましてから温め直すことで旨みが増す」などとの具体的なアドバイスを、参加者もメモを取りながら聴き入っていました。
続いて行われた第2部の「持ち寄り郷土料理を囲んで座談会」では、地元・鷹巣地域でヤマノイモの生産と販売に関わっているJA鷹巣町婦人部の主婦ら6名が講師の井川氏を囲んで、ヤマノイモの上手な調理方法や販売促進などについての意見を交換し合いました。
はじめに井川氏が、「自分は水戸生まれだから幼少の頃から納豆料理が当たり前の世界。地元では地域を挙げて特産品としての誇りのもとに守り育てている」、「郷土料理の良さは、"足元"では分からず"外"へ出されてその値打ちが出てくる」などと語りながら、特産品は地元で愛されてはじめて外へ向かって成長していくものであることを強調しました。
参加者からはヤマノイモについて「東京築地で揚げ物の宣伝をした際、独特の食感だと喜ばれた」「農家レストランを立ち上げたいが成功の秘訣は?」「粘りが強くて好んで料理するが手間がかかりすぎる」などといった意見や感想が出されましたが、これらに対して井川氏は、「私のホテルでも喜ばれている逸品だ。どんな料理にでも使える」「旬の提供が大事。食材メニューもふんだんに」「確かに時間がかかるが、工夫次第で新しい料理が生まれる」と、ヤマノイモは素材がすばらしいだけに、新鮮味を売りに、単品ではなしに特産の山菜などを混ぜ合わせたものに調理するなどの工夫も必要とアドバイスしていました。
このあとフロアの参観者からも、都市部での地場産品の効果的な販売方法などの質問が出されましたが、井川氏は締めくくりに、「よいものは必ず評価される。地元の皆さんがこよなく愛し、いい素材にしていい調理品に仕上げていく地道な努力が大切。少なくとも私はヤマノイモに惚れている。これからも自身を持って生産に、販路拡大に精を出してほしい」と熱いエールを送っていました。
(2008.3.17)