2008年01月26日
コンテンツ番号5358
「内陸線談議」第2弾、阿仁で開催される
「秋田内陸縦貫鉄道を元気にする会」(代表・中田潤秋田県議会議員)が主催する第2回目の新春「内陸線談議」が26日、阿仁山村開発センターで開催され、内陸線の活性化を図ることを主題とする基調講演やパネルディスカッションなどを通して、内陸線の魅力や存続のための課題等について活発な意見交換が行われました。
同会は、議員や行政、民間の各種団体が連携して内陸縦貫鉄道の存続のための方策等を具体化することを目的とした任意の学習団体。去る12日に仙北市西木町で第1弾となる同談議を開催して、存廃の岐路に立たされている秋田内陸線の存続についての話し合いを行いましたが、このたび、同じく、広く意見を交わして内陸線の活路を見出したいと市民らに参加を呼びかけていたものですが、内陸線支援の関係団体や市民らおよそ180人が集いました。
始めに中田会長が「内陸線を何とかして残したいと言う思いが強い。アイディアひとつで生き延びた地方鉄道もある。地域の暮らしに欠かせない内陸線を再生させる可能性を探る機会としたい」とあいさつ。続いて、来賓として出席した岸部北秋田市長と武藤北秋田地域振興局長があいさつの中で、「住民の足として、そして地域の振興のために必要とされる内陸線に活力を見出せるよう期待したい」などと述べました。
このあと、「宝物発見のヒントを探ろう」のメインテーマのもと、丸果秋田県清果社長・高橋良治氏と株式会社九州屋専務・中村郁男氏による基調講演が行われました。この中で高橋氏は、秋田県は農業県と言われながらも、農業の純生産額は東北最下位で、その原因が米作に偏っていることであることを紹介しながら、「県民性の問題と言われているが、野菜や果物作りに挑戦しようとする発想や意気込みが乏しい」と、他県と比較した秋田県農業の劣勢を指摘しました。 その上で、「内陸線再生のためのヒントは、地域の皆さん自身の中にある。行動なくして実りなし」と述べ、目標を定めて地域の皆が汗を流す行動が肝要であることを示唆しました。
一方の中村氏も高橋氏と同様に全国で青果物を扱う専門店の取締役。「商売はブランドである。消費者を引き付ける魅力と話題性で決まる」と話し、内陸線への観光誘客についても、「地域の素材を価値観のあるものに仕上げることがポイント」と、マタギや自然にこだわった戦略に力を入れ、都市部からの観光客にアピールする努力が不可欠とアドバイスしました。
続いて行われたパネルディスカッションでは、「秋田内陸縦貫鉄道を元気にする会」の門脇光浩氏のほか、「内陸線の存続を考える会」、「内陸線エリアネットワーク」それぞれの代表者である佐藤信夫氏、大森光信氏と基調講演をした高橋、中村両氏が登壇。パネラーの話題提供にフロア(参加者)からも多くの意見等が出され、活発な意見交換が行われました。
この中で、沿線地域での活動については▽乗車回数券の購入依頼を拡充していきたい▽(取組みへの)地域温度差の解消に努めよう▽「乗って残す」実践の強化が必要―などとする意見が出されました。また、観光利用増へ向けては主に、▽地域素材の宝物は沢山あるが、その「売り方」の仕組み作りの強化が重要▽地域ブランド、イメージのアピールが課題▽外に売り出すための「カネ」「時間」「汗(努力)」は惜しまれない等の発言がありました。このほか、「市職員等の通勤利用における問題点の解決を急ぐべき」「基金を使ってのハード面の補強・修繕はできないのか」等、差し迫った課題への対応を求める声も相次ぎました。
鷹巣と角館を結ぶ国鉄「鷹角線」の建設計画が打ち出されたのは、今から85年前の大正11年。以後、昭和9年から鷹巣駅からの部分開通が重ねられ、「阿仁合線」(鷹巣〜比立内間)、「角館線」(角館〜松葉間)として地域の暮らしを支えてきました。「国鉄再建法」(昭和55年法律)に基づく赤字ローカル線の廃止・経営転換を経て、第三セクター鉄道として全線の開業を成したのが平成元年4月。沿線住民の長年の悲願がかない、産業や観光の振興に期待が膨らみました。しかしながら、低迷の地域経済のもと、車社会の伸展と沿線地域の過疎化や人口減少等による利用客の減少と赤字経営が加速度的に増し、構造的な経営難に陥ってしまいました。
公共交通の鉄路として維持できるのか、あるいは財政負担の限界を理由に他の手段に切り替えざるを得ないのか―、内陸線はいま、存廃の岐路に立たされています。「乗客減少にストップを」を合言葉とした各種の存続活動が続けられてきましたが、幸いにも、観光利用客が少しずつ増えてきています。この「外」から眼を向けられてきた動きを検証し、戦略を高めながら受け皿整備にも力を注いでいかなければなりません。そして、「内」においては、何よりも住民の利活用(乗車)が最優先されます。「我らが内陸線」の意識を高めた地域を挙げての実践を積極的に積み上げていくことが求められています。
(2008.1.26)