2009年12月07日
コンテンツ番号5506
「いのちとこころのシンポジウム」
うつ病や自殺予防について考える「いのちとこころのシンポジウム」が12月7日(月)、市交流センターで開かれ、約200人参加者が、講演とパネルディスカッションで自殺予防への理解を深めました。
秋田県は、14年連続で自殺率でトップを維持しているのが現状。そのため、秋田県や市町村をはじめ関係機関などでは、産学官の連携で自殺防止対策に取り組んでいます。シンポジウムは、市が、地域自殺対策緊急強化事業により、地域ぐるみで自殺予防への理解を高めることなど目的として開催したものです。
シンポジウムでは、NPOうつコミュニティ代表でジャーナリストの上野怜(れい)さんの基調講演のほか、「自殺予防!!私たちにできることを考える」をテーマに、上野さん、藤里町の「心といのちを考える会」会長の袴田俊英さん、黒澤司法書士事務所所長の黒澤芳彦さん、精神ボランティアれもんの会代表の小坂和子さん、市社会福祉協議会事務局長の青山ゆき子さんがパネリストとしてパネルディスカッションを行い、自殺の原因や対策などについて意見を交わしました。
基調講演の講師を務めた上野さんは、フリーのジャーナリスト。35歳でうつ病になり、現在も治療を続けながらうつに関する取材、執筆を重ね、全国各地で講演なども積極的に行っています。
上野さんは、自身の病気体験や多くの患者への取材などを踏まえ、うつ病について、「憂うつな気分が重くなったもの程度と思われがちだが、海に例えれば、憂うつ気分は海面から浅いところで漂っている、うつ病は、光もささない海の底に沈んでしまった状態」「うつは心の風邪、休んでいれば治るともいわれるが、それは大きな誤解。肺炎や骨折のように、治るまでにとても時間がかかる重い病気」と説明しました。
症状についても、「億劫感とイライラ感、加えて不安感が生ずる。この3つの感覚が入り混じり複雑な精神状態になる。そのため、悩み、嘆き、苦しむことになる」、とそのつらさを紹介。
治療法については、「抗うつ薬を飲んで休んでいればよい、ともいわれるが、薬は万能薬ではない。また、休むことはそれまでの生活の中で持っていたその人の役割を失うことにつながる。病気だからといってとじこもらず、家事を手伝う、図書館に行く、などできることをして生活を変えようと努めることが必要」、と述べました。
また、「立ち直った人に共通して言えるのは『考え方を変えた』こと。うつ病から逃げず前向きに開き直ること。『元に戻りたい』と焦ってしまうことは逆効果。ネガティブならそのままでよいので、それまでと違う生き方に向かうことが大切」と、説きました。
最後に、「うつ病イコール自殺ではないし、その逆でもない。自殺には、病気や失業、孤独といった原因があり、うつはその引き金になるもの。周囲が『あなたは一人じゃない、見守っているよ』というサインを送ってあげることで自殺を防ぐことができる」と、家族や地域の声かけが大きな力になることを強調していました。
続くパネルディスカッションは、袴田さんが座長となって進行。はじめに黒澤さんが、司法書士として多重債務者の相談にあたった経験から、借金問題が解決し、体まで健康を取り戻した例、解決しつつあったが、本人の性格から結局自殺に至ってしまった例などを紹介し、「自殺してまったケースは本当に悔やまれる。借金は必ず解決できるし、悩みを話せる人がいること、また手を差し伸べることで命はつなぎとめられる」、と訴えていました。
小坂さんは、精神障害者から「気軽にぐちを聞いてくれる場がほしい」との声があったことをきっかけに、交流センター内にコーヒーを飲みながら語り合うサロンを開いた経緯や、花見会やクリスマス会など語らいの場をつくる活動を紹介し、「一人で悩まず誰かと話をしましょう、命を大切にしましょう、というメッセージを送っている」と述べました。
また、社会福祉協議会の青山さんは、土日を除き地区順に毎日実施している心配事相談事業や助け合い資金の貸与制度などを紹介し、「助け合い資金を借りる理由はさまざま。以前は高齢者がほとんどだったが、最近では若い世代からの申込も増えてきている。しかし、これらの制度の存在を知らない人も多いので、全市を回ってリーフレットを配布した。小さなことでも相談してほしい。私たちで解決できないときでも専門家を紹介できる。いつでもどこでも相談を聞いてあげられる機関でありたい」、と話していました。
会場からは、うつ病など精神疾患で失業したときの就労支援制度や、民生委員など地域で患者に対応する場合の個人情報保護との関わりについて質問がありました。これに対し、上野さんは、「神奈川県では公立病院で職業指導しているケースもある。行政に要望していくことも必要」「情報を共有しないと支援に結びつかない。うつ病は恥じるような特別な病気でないことを本人も社会も認識すべき。個人情報の守秘義務は報道などの分野でのこと」、とアドバイスを送っていました。
北秋田市が設けている無料電話相談、関係機関等は次の通りです。
■『いのちとこころの電話相談』(仮称)
TEL:0800−800−8156(フリーアクセス)
曜日と時間 月曜日〜金曜日 午前10時〜午後6時
※祝日と年末年始(12月29日から平成22年1月3日)を除く
対 象 北秋田市にお住まいの方
相談時間 1人1回50分程度
電話は北秋田市内からの通話のみ限定です。相談員は、精神保健の研修を受けた方たちが行います。秘密は守られます。
■北秋田市保健センター TEL:62−6666
■北秋田保健所TEL:62−1165
■北秋田市社会福祉協議会 TEL:69−8025
電話相談 TEL:0186−62−6868
毎週月〜金曜日/時間午前10時〜午後3時/年末年始は休み
月:たかのす、火:もりよし、水:あに、金:たかのす
たかのす地域福祉センター TEL:63−2109
あいかわ地域福祉センター TEL:78−3166
もりよし地域福祉センター TEL:72−3494
あに地域福祉センター TEL:82−3374
■日本いのちの電話連盟 相談電話 TEL:0120-738-556(毎月10日)
(2009.12.7)