2009年07月04日
コンテンツ番号6755
秋田県立大学公開講座
(2009.7.4)
秋田県立大学主催の公開講座、「秋田の『イスナ』を育もう」が7月4日(土)、市中央公民館で行われ、市民ら約30人が農耕文化の起源や自然エネルギーの可能性などについて学びました。
県立大学の公開講座は、地域課題をテーマにした独自の公開講座や講演会を開催し、キャンパス内外で地域に学習の機会を提供しています。本年度は、北秋田市、秋田市、横手市で公開講座を予定しています。
開会にあたり、柚原義久(ゆはら よしひさ)県立大学副理事長は「秋田県立大学は創立10年になる。おかげさまで学生もたくさん集まり、就職率も理系の大学では全国1位、大企業にも就職が決まるようになってきた。大学の存在が認められてきている。北秋田市では久しぶりの公開講座となるが、これを機会に、それぞれの知識を深めてほしい」などとあいさつ。
佐藤唯直副市長は「秋田には、地下資源や森林資源など恵まれた資源があるし、素晴らしい人材もたくさんいるが、各分野において資源や人材を活かしきれない。公開講座は、そのような人材などを掘り起こす意味でも大変意義のあるものと思う。今日の講座は、時代の最先端をいく内容。皆さん有意義に学んでほしい」と後援者としてあいさつしました。
最初の講座は、田代卓(たしろ たかし)生物資源学部特任准教授が「農耕文化を見つめ直して〜秋田の未来を作り上げる可能性」と題して講演しました。
田代准教授は「土地を耕して、作物を育てることが文化のもとと言われている。人類は長い年月をかけて、野生植物から栽培植物を作り上げてきた。現在、私たちが食べているイネやムギは、人類の祖先の手によって、何千年もかけて改良し、発展し続けてきた文化財といえる」と農耕の起源を説明。
また「世界での農耕起源は、根栽農耕文化、照葉樹林文化、サバンナ農耕文化、地中海農耕文化、新大陸農耕文化に分類され、世界各地で始まり、土地や気候に合わせて独自に発展し、世界中に伝播していった」と述べ、秋田の農耕文化についても「照葉樹林文化として発展してきたが、野生植物にある毒抜きの方法(粉砕、水さらし等)の食品加工文化が世代に引き継いでいかなければならない。豊かな山林資源を活用して、独自の文化を後世に継承していかなければいけない」と研究の成果をもとに説明しました。
このあと、漆川芳國(うるしかわ よしくに)システム科学技術部学部特任教授が「自然エネルギー社会〜動き出したグリーンエコノミー、私たちの生活はどう変わるのか〜」と題して講演しました。
漆川教授は「現在、世界中の人々の生活を支えているのは、石油に代表される化石燃料である。石油の生産量は2008年7月にピークに達したとされ、これからは徐々に減少していくと予想される。どんな資源でも同じだが、全体量の50%採掘されるまでは生産量は増え続けるが、全体量が50%以下になると生産量は減少していくもの。石油の場合も、減少過程に入ると、適切な代替エネルギーが開発されない限り、経済価値が上昇する一方となる。安価で、いつでも、どこでもという石油はいつもでも期待できない」と石油に依存するエネルギー構造の問題を説明しました。
また「化石燃料など天然資源は使ってしまえばなくなるので、枯渇エネルギーといわれる。これに対して、太陽光、太陽熱、風力、水力、地熱、バイオマスなど、いつまでも使用可能なものを再生可能エネルギーまたは自然エネルギーという。これまでの開発はあくまで石油の補助的位置づけであったが、地球温暖化により、世界的にエネルギー使用の転換される時期にきている」とし、「オバマ米国大統領が『グリーンエコノミー政策』を進めると宣言したことで、一気に世界中でこの考えが具体化している。しかし、この考えを進めることは、石油エネルギーを基盤とした自動車産業などに属している企業や労働者の衰退につながることも考えないといけない。一方で自然エネルギーに係る産業の発展が期待されるので、既存のインフラや労働者をどのようにシフトさせていくのかも重要な課題である」と自然エネルギー産業の繁栄に伴う、社会構造の変化について説明しました。
最後に、参加者全員に公開講座の修了証書が授与されました。