2010年01月26日
コンテンツ番号7634
忘れ去られ行く行事「唐松講」の記録なども
合川地方史研究会(三浦欽一会長、会員76人)はこのほど、会誌「史友」第32号を発刊しました。
同研究会は平成2年12月、旧合川町在住者及び出身者を中心に、合川の郷土史に関心を持つ87人の会員で発足した地方史研究団体。年2回、地域の歴史・文化などについての研究レポートや紀行文などを掲載する研究誌の発行ほか、歴史家による講話会の開催、文化財の保護顕彰、見学会の開催などの活動を行っています。
「史友」第32号はB5版52ページ。表紙は、上杉集落を冬の季節風から守っているケヤキ並木、通称「ハッケの欅」の写真で飾られています。説明では、並木が延長1.5キロ程の間に樹齢約150年ほどのケヤキ300本あまりが並んでいることや、『ハッケ』と呼ばれているのは、古老によると屋敷の崖縁に沿って群生している植生地の形状(ハケ、シラ)に由来するものであることが、会員の調査で確認されたことが紹介されています。
掲載されている記事は、「合川風土記(福岡龍太郎さん)」「喜三郎家『オンジ』の周辺(藤嶋喜八郎さん)」「村の女たちの美意識〜野良着に魅せられて(福岡サヨさん)」の3編の連載ほか、「カラマツコ(唐松講)聞き書き」(津幡トシさん)、「能代市・鶴形地区の歴史探訪会に参加して(澤藤茂子さん)」などと、力作10編、コラム2編ほどで構成されています。
このうち、忘れ去られようとしている民間信仰の一つ「カラマツコ(唐松講)」について調べられた津幡トシさんの研究レポートは、古くから下(した)道城集落で行われてきた松橋系カラマツコに焦点を当て、戦前から現在まで70年にわたる行事の変遷や時代ごとの社会状況を紹介した貴重な記録になっています。
津幡さんは文章の中で、「昔から伝わってきた事柄が朽ちていく様に、何故か焦りを感じているこのごろです。科学的に説明のつかないことは信じない世の中ですが、信仰、信心が失せて地域の神々が放置化されていくことに心配やら、申し訳ない気持ちが湧いてきます」と、述べています。
また、東京都在住の会員・小笠原みつ代さんの寄稿は、お盆休みで実家の増沢に帰省した際に、下田平集落(現能代市)に住む父の友人から聞いた話として、昔は下田平が間野瀬という木戸石村の小字であったことを紹介したもの。
「江戸時代の紀行家・菅江真澄が今から200年前に記録した地名も既に下田平となっていることから、間野瀬と呼ばれていたのはもっと前になる。今、下田平は平成の大合併で能代市になってしまった。行政が変わるたびに住民は右往左往させられる。しかし、近隣の村々のつながりは昔どおりに続く」と、歴史のロマンとふるさとへの思いを述べています。
「史友」は市立図書館・図書室などで閲覧できるほか、市内の書店にも置かれています。1冊1,000円。詳細は合川公民館(TEL:0186-78-2114)まで。
(2010.1.26)