2017年10月07日
コンテンツ番号2057
救命率の向上につながる取り組み学ぶ
(2017年10月7日)
第23回秋田県救急隊員セミナー(秋田県消防長会主催)が、10月7日(土)に文化会館で行われ、県内の救急業務にかかわる関係者など約300人が参加し、救命率向上につながる取り組みについて学びました。
救急隊員セミナーは「救命(いのち)の絆 より確かなものに~ひろがるつながる救護の輪」をテーマに、救急活動における症例、体験等の研究成果をお互いに披露し、医療関係者等からの指導・助言を受けながら、救急に関する知識を高め、救急隊員の資質向上と意識の高揚を図り、救急業務の円滑な推進することを目的としています。
この日の開会式では、中嶋誠消防長が「消防業務に対する住民の期待はますます大きくなり、救急需要が増大する中、病院収容時間の延伸への対応や救急隊員教育体制といった諸課題にも対処する必要が求められていることから、より一層のご支援とご協力をお願いする」などとあいさつ。
続いて、津谷市長が「平成3年の救急救命士法施行から26年が経過し、救命士としての役割の拡充や医療の向上、隊員の皆さんによる市民を対象とした応急手当講習の実施などもあり、日本の救命率は飛躍的に向上している。しかし、救急需要は増大傾向にあり、その業務に対する期待はますます大きくなっている。皆さんには、今後ともたゆまぬ努力と研さんを積み重ねて、救急に対する知識と技術を高め合い、一つでも多くの命を救うことのできる体制づくりに努めてもらいたい」などと全県から集まった参加者を歓迎しました。
基調講演では、秋田大学医学部附属病院救急部の中永士師明(なかえ はじめ)部長が「救命率向上に向けて-最近の救急医療-」と題して、最新の救急医療を取り巻く現状について講演しました。
この中で中永部長は、消防機関ではなく民間で働く救急救命士のことを取り上げ「全国で救急救命士の有資格者が約5万6000人いるが、このうち消防機関で働いているのは約3万人であり、資格を生かせていない人も多い。医療機関では、病院診療補助やドクターヘリ診療補助、在宅や老健施設からの療養者搬送などに救急救命士を活用できるほか、民間救急会社やホテルチェーン、旅行会社などの需要もある。しかし、民間救急救命士の活動の安全と自立性を担保するためには、消防機関のメディカルコントロール体制と途切れのない関係を持った病院前救護統括体制を構築することや、救急救命士の事故発生時の対応と医療保障体制を図るなどの課題もある」などと説明しました。
このあとのパネルディスカッションでは「バイスタンダーの育成・実施率アップ・フォローアップ体制の構築」をテーマに、各消防本部のパネリストから事例発表のあと、医師の助言を受けながら意見を交換しました。また、活動症例発表では、消防職員が「東北自動車道に関わる救急活動の報告と展望」、「山林遭難で生存発見・搬送した症例を経験して」、「労働災害事故による心肺停止症例」と題してそれぞれの事案の対応内容などを紹介しました。
用語解説
- メディカルコントロール体制(MC体制)
病院前救護において、医学的観点から救急救命士を含む救急隊員が行う応急処置等の質を保証する仕組み。 - バイスタンダー
救急現場に居合わせた人(発見者、同伴者等)のこと。
総務省消防庁が2010年2月に発表した「平成22年版救急・救助の状況」によると、119番通報から救急車が到着するまで平均7.9分かかっている。その間に発見者など現場に居合わせたバイスタンダーによる心肺蘇生法等の応急処置の有無が救命率を大きく左右する。