2006年11月09日
コンテンツ番号4774
〜伊勢堂岱遺跡調査指導委員会〜
世界遺産への登録申請などを協議した平成18年度第2回伊勢堂岱遺跡調査指導委員会(9日、市中央公民館で)
国指定史跡となっている「伊勢堂岱遺跡」の平成18年度第2回調査指導委員会(委員長=小林達雄國學院大学教授)が9日、市中央公民館で開かれ、委員による現地視察や遺跡整備基本計画等についての協議が行われたほか、遺跡をユネスコの世界遺産として申請することを確認しました。
伊勢堂岱遺跡は縄文時代後期前半(今から約4千年前)の遺跡。平成7年、大館能代空港のアクセス道路建設に先立つ発掘調査で発見され、4つの環状列石や配石遺構など、多くの祭り・祈りの施設が見つかり、大規模な祭礼の場ではないかと考えられています。平成13年には国の史跡に指定されています。
今年度行われた第13次調査では、遺跡発掘現場の中央部に位置する環状列石Cの西側周縁部を重点的に調査、これまで見つかったものより大きい、6m×6mの方形の配石遺構と6本の柱穴、また別の場所でも直径約5mの竪穴住居などが発見されています。
この日は午前9時から指導委員及びワーキンググループのメンバーが参加し現地視察。市教育委員会の榎本剛治主任学芸員が発掘現場を案内しながらこれらの第13次調査の調査結果について委員に報告しました。
調査委員会はこの後市中央公民館に戻って再開、調査の概要を確認し、今年度中に策定されることになっている遺跡保存整備事業の基本計画案や石質の鑑定報告等について協議しました。委員からは、「計画書には北側斜面にブナを植えることになっているが、当時はこのあたりにはブナはなかったはず。むしろクリやトチ、クルミなど実のなる広葉樹を植えるべき」「下草も大切。カタクリやフクジュソウ、ウバユリなどの季節の山野草は訪れる人を魅了する」など、魅力ある遺跡として整備するための意見が出されていました。
案件の最後には、伊勢堂岱遺跡をユネスコの世界遺産暫定リストに申請することについて協議しました。世界遺産とは、1972年のユネスコ総会で採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(世界遺産条約)に基づいて世界遺産リストに登録された、人類が共有すべき普遍的な価値を持つ遺跡や景観そして自然など。日本では、奈良法隆寺地域の仏教建造物や原爆ドームなどの文化遺産、白神山地などの自然遺産の13ヵ所が指定されています。
世界遺産は、登録を求める国や地域の担当政府機関が候補地推薦・暫定リストをユネスコ世界遺産委員会に提出、調査、審議を経て最終的に決まりますが、日本政府(文化庁)からユネスコへの推薦のためには、国内での「ユネスコ世界遺産暫定リスト」に掲載されることが必要です。
ここ数年、全国で自然環境や文化財の保全、観光振興などを目的として暫定リストに登録するための運動が活発化しており、日本では▽平泉の文化遺産(岩手県)▽古都鎌倉の寺院・神社ほか(神奈川県)▽彦根城(滋賀県)▽石見銀山遺跡(島根県)の4件がリストに搭載され、推薦を待っており、さらに富士山など30カ所以上でリスト登録への運動が展開されています。
伊勢堂岱遺跡も、複数のストーンサークルを有するなど世界でもまれな縄文時代を代表する史跡であることなどから、手を挙げることにしたものです。
このような経緯を説明しながら榎本主任学芸員は、「ただ、世界遺産の性格から伊勢堂岱単体では登録の要件を満たせない。そのため、大湯環状列石や小牧野遺跡など北東北、北海道のストーンサークルを持つ遺跡と連携しながら進めたい」と話していました。
委員会の小林委員長は、「国際的にも日本の縄文文化への関心は高く、伊勢堂岱遺跡も資格は十分にある。ただ、登録のためには、地元での熱意が必要。小ヶ田駅を降りると遺跡を示すモニュメントがあるとか、まちのいたることろに遺跡のシンボルキャラクターが描かれているなど、ムードを盛り上げることも大切」と、市が一体となって取り組む必要があることを訴えていました。
申請書類は今月中にも提出の予定。順調に進めば今年6月にも暫定リストへの登録が決まります。
(2006.11.9)