Vol.2 縄文人のライフスタイル

現在では縄文時代の研究はかなり進んでいて、彼らの暮らしについて、いろいろと分かってきています。

まずは平均寿命。科学や医療が発達していない当時、出産は今以上に命懸けでした。乳幼児が亡くなることも多く、平均寿命は40歳前後(研究者によっては50歳という人も)。現代人の平均寿命は80歳を超えていますから、現代人は人生を2回やっていることになります。

それ、ちょっとすごい。

病気もいろいろありました。見つかる人骨の多くに、歯周病を患っていた痕跡があります。木の実などのデンプン質が主食だった彼らは虫歯も多かったようです。虫歯の痛さと歯周病になって歯が抜ける恐怖に、縄文人は恐れおののいていたかもしれません。

また癌に罹っていた人骨も見つかっていて、自分の身体に何が起こっているのかわからない状況は、とにかく恐ろしく、苦しかっただろうなと思うのです。

では、子育てはどうだったのでしょうか。

集落を存続させていくためには、子どもたちは社会の宝だといっていいでしょう。命が次に繋がらなければ、集落は消滅してしまうからです。であるならば、核家族的に子育てをしていたというよりも、集落みんなで子育てをしていた拡大家族と考えた方がよさそうです。

働き盛りのお父さんお母さんたちは食料を探すために森や川、海などに出かけていかなければなりません。その間、残された大人が子どもたちを集めて面倒を見ていたはず。

また不慮の事故や現代ならなんてことない病気で亡くなる親もいたことでしょう。そんな時、残された子どもは集落の子どもとしてみんなで守り育てたと考えられるのです。

とにかく厳しい自然環境の中で、みんなが共に生き抜くためにはどうしたらいいのかを考え、適材適所で働き、各自が持てる力を発揮しながら暮らしていたのが、縄文時代だったと言えるかもしれません。

しかし自分たちの力ではどうにもならない理不尽なことが起こることもあります。そこで登場するのが祈りであり、伊勢堂岱遺跡のような祈りの場所を作ったのかもしれません。

次回は、祈りの道具である土偶にフォーカスしていきます。

 

譽田亜紀子(こんだあきこ) プロフィール

文筆家。岐阜県生まれ。京都女子大学卒業。奈良県橿原市の観音寺本馬遺跡の土偶との出会いをきっかけに各地の博物館や遺跡を訪ね歩き、土偶そして縄文時代の研究を重ねている。現在は各種メディアを通して土偶や縄文時代の魅力を発信する活動を行う。近著に『かわいい古代』(2021年、光村推古書院)『新版 にっぽん全国土偶手帖』(2021年、世界文化社)他多数。