2005年10月11日
コンテンツ番号9290
市主催・前進座公演「髪結新三」
劇団前進座「髪結新三(かみゆいしんざ)」の公演が10月11日(火)、市文化会館で行われ、詰めかけた多くの観衆が、江戸情緒あふれる歌舞伎の舞台を堪能しました。
公演は市合併記念の自主事業として開催されたもので、昼の部、夜の部と2回上演され、テレビなどでおなじみの中村梅雀(ばいじゃく)、嵐圭史、藤川矢之輔といった、前進座の大御所が出演するとあって、ホールには開場前から待ちわびたファンの列ができていました。
ステージには、伝統的な芝居でよく使われる黒、柿色、萌黄3色の定式幕が張られ、歌舞伎ムードたっぷり。幕の向こうから三味線と析(き)の音が響くと、いやがおうにも心が浮き立ちます。
原作は、幕末から明治にかけて活躍した狂言作者・河竹黙阿弥の「梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう)」。江戸時代に実際に起きた事件を扱ったいわゆる「世話物」の傑作です。黙阿弥作品には「弁天小僧」や「白波五人男」など泥棒や悪党が登場する戯曲が多く、この作品でも小悪党や侠客が重要な役どころを担います。
舞台は、傾きかけた材木商・白子屋の見世先の場面から始まります。小悪党・髪結いの新三(中村梅雀)が、家の事情から駆け落ちを図った白子屋の娘お熊(河原崎國太郎)とその相手である手代の忠七(瀬川菊之丞)を欺き、身代金を巻き上げようとお熊を誘拐、自分の長屋の押入れへ閉じ込めます。
白子屋筋の善八(藤川矢之輔)に頼まれた老侠客の弥太五郎源七(嵐圭史)がお熊を取り戻しに来ますが、あべこべに格下の新三にののしられ、目的を果たせません。ところがこの後、次第を聞いた新三の大家の長兵衛がその強欲さから家主の立場をも利用してお熊を戻させ、お熊と引き換えに身代金を手に入れると、その半分を巻き上げてしまいます。一方で面目をつぶされた源七は・・・・・。
と、新旧侠客の対立を中心に江戸下町の人間模様が情緒豊かに描かれ、特に新三を演じる中村梅雀の調子の良い台詞回しは、芝居を見慣れた方たちにも大受け。また、新三宅の場では、梅雨明けの初夏の到来を感じさせる初鰹をさばく魚屋の包丁さばきが鮮やかに演じられるなど、季節感を大切にする世話物の特徴がたっぷりと表現されていました。
髪結新三の粋な悪党ぶり、任侠世界の新旧男の駆け引き、侠客の上をいく百戦錬磨の大家など個性豊かな登場人物が繰り広げる、かどわかし、ゆすり、たかり、立ち回りの数々、また106年ぶりに復活した「佐賀町居酒屋」の場面など見所と笑いが満載の舞台に、満場の観衆も大満足のようすでした。